あと10分延長すべき?
発酵具合の見極め、自信ないなぁ
レシピ通りの時間は発酵させたのに
パンがふわふわにならない…
こんなお悩みありませんか?
この記事では、僕がパン屋での製造経験で学んだ、パン作りにおける発酵具合の見極め方法をご紹介します。
これを読むことで発酵の見極めが上達し、ふわっふわなパンが作れるようになります!
- より正確な発酵具合の見極め方
- その時の気温や生地温度に左右されないベストな発酵具合の調整
- 発酵時間の延長を簡単に判断できるようになる考え方
読者・視聴者様の声
あと10分延長すべきかどうか
自信を持って判断できるようになった!
過発酵を恐れて早く焼いて失敗することが
なくなりました!
一次発酵の見極めで使う3つのポイント
一次発酵における発酵具合を見極める際には、これら3つのポイントを組み合わせてチェックすると良いでしょう。
- 見た目の大きさ感覚
- フィンガーチェック(指穴試験)による穴の残り具合
- 生地表面を触った質感
恐らく多くの人はこれらのうちの一つだけを意識して発酵具合をチェックしているでしょう。
しかし、パンの種類によって最適発酵具合は違ってくるので、一つのポイントだけで考えると正確な判断が出来ない場合があります。
それではこれらのポイントを一つずつ詳しく見ていきましょう。
見た目の大きさ感覚
「約2倍の大きさまで膨らんだら…」
こんな感じの文言をレシピで見たことありませんか?
生地が発酵しているか否かを確認する手段としては、見た目の大きさ感覚は最も単純でわかりやすい方法です。
ですが、作るパンの種類によってどのくらいまで膨らませるのが正解か変わってきます。
なので大きさの目安はあくまでその都度レシピを参考にしましょう。
毎回同じ配合で同じ量の生地を同じ容器で発酵させているのであれば、慣れてくれば見た目だけで判断できるようになりますが、そうでなければあくまで大雑把なチェックとして捉えておきましょう。
フィンガーチェック(指穴試験)による穴の残り具合
膨らんだ生地に指を差し込み、穴の残り具合を見る方法です。
この方法は穴の縮み方を視覚的に判断するだけでなく、指を差し込む際に感じた弾力の強さ、つまり触覚的な判断も同時に行えるため、非常に精度の高い判断が可能です。
そのやり方を解説します。
- 人差し指の第二関節付近まで手粉をつけておく
- 発酵した生地の中心に指を差し込む
- 指を離し、穴の戻り具合や戻る速度などを観察する
そして、このフィンガーチェックでより正確な判断をするために次の三つのポイントを意識してみてください。
指穴の残り具合の目安
もっとも有名で皆さん意識できているポイントが、指穴の残り具合です。
基本的な目安は、指穴が縮まずにしっかり残っている状態がベストな発酵具合と言われています。
この「基本的な」というのは、ごく一般的な配合の生地のことを指します。(普通の食パン、バターロール、菓子パンなど)
もし、穴が素早く縮むようであれば発酵不足、生地全体が萎んでしまうようであれば過発酵です。
ただし、中には例外もあります。
- ベーグル生地(元々硬い配合なので指穴はある程度縮むでしょう)
- ライ麦粉が高配合のドイツパン(一次発酵が極端に短いor無い場合が多い)
- 中種法における本捏ね後の一次発酵(こちらも短い場合が多い)
etc…
これらの場合は必ずしもフィンガーチェックで指の穴がしっかり残っていなくても問題ありません。
初心者のうちはどれが例外なのかよくわからないでしょう。
レシピに詳しい指示があるはずなのでその都度参考にしましょう!
指穴周りに気泡が出来るかどうか
フィンガーチェックでは指穴の残り具合に加えて、穴の周囲に気泡がプクッと出来たかどうかを意識するとより正確な判断が出来ます。
穴は残っていはいるけど、
微妙に縮んだ…どっちだろう?
そんな微妙なラインの時ってありませんか?
発酵オーバーが怖くてそれ以上の延長はやめた、そんな方も多いでしょう。
しかし、穴の周囲に気泡がプクっと出来ていなければ、まだ安全圏です。
この状態さえ越えなければ発酵オーバーで失敗することはほぼ無いので、迷ったらとりあえずその状態になるまで発酵を延長してみましょう。
指を差し込んだ時の抵抗力
生地に指を差し込む際は、生地から指に伝わる抵抗力も意識してみましょう。
生地に差し込んだその時点で既に強い抵抗力を感じた場合、穴も素早く縮むでしょう。
抵抗力を意識して、穴の戻り具合を確認する。
この作業を毎回のパン作りで行っていくうちに、生地の柔らかさだけでも発酵具合がわかるようになり、ベンチタイムや最終発酵(二次発酵)での見極めにも役立ちます。
生地表面を触った質感
基本的な配合のパン作りにおいては、大きさによる判断とフィンガーチェックに加えて表面の質感も判断材料に加えると良いでしょう。
発酵不足の生地表面は、捏ね上げ直後の生地のように湿った感じやペタペタとくっつく質感があります。
一方で最適発酵の状態では、乾燥はしていないもののサラっと触れることが出来るようになります。
ですがこの見極めもあくまで基本的な配合の場合のみです。
粉のたんぱく量のわりに吸水量が多い配合のフランスパン生地や高加水パンの生地だと、例え最適発酵であっても手粉無しでは触れません。
といっても、基本も例外も含めて言えることは、捏ね上げ直後と発酵後では生地表面の質感が変わるということ。
日ごろから大きさや指穴だけでなく質感にも意識を向けておくことで、発酵の進み具合がより理解できるようになります。
ベンチタイムや最終発酵(二次発酵)での発酵見極め
ベンチタイムと最終発酵は指を突っ込めないから
発酵具合の見極め方がイマイチ…
確かに、一次発酵に比べると
見極めは難しいですよね。
指を差し込むことができないベンチタイムや最終発酵の見極めを苦手に思う方は多いです。
約2倍から3倍の大きさになるまで、という指示が書いてあるレシピも多いですが、そもそも2倍なのか3倍なのか曖昧ですし、大きさだけで判断するのは意外と難しいです。
ですが、見方の基本的な部分は一次発酵とそう変わりありません。
以下にベンチタイムと最終発酵それぞれの発酵具合の見極め方を解説します。
ベンチタイムの見極め方
ベンチタイムの見極めをマスターするには、そもそもベンチタイムは何の目的で行う工程なのかをしっかり理解することが重要です。
丸めた生地を休ませるためじゃないの?
じゃあ、何のために休ませるの?
「休ませる」はあくまで目的のための手段です。
丸め作業で蓄えられてしまった生地の弾力を落ち着かせるために休ませるのです。
何のためか?成型作業で無理なく形を変えられるようにするためです。
「休ませること」を目的だと勘違いしていると、レシピに「15分休ませる」と書いてあった場合に「15分経ったからもう大丈夫だね、目的達成!」と次に進んでしまうでしょう。
ですが生地の捏ね具合や使用材料、その時の室温や生地温度などなど…様々な状況次第で15分で本当に生地が緩むかどうかは変わってきます。
レシピの指示を鵜呑みにせず、生地が緩んで成型しやすい状態になるまで待つ
これがベンチタイムでは重要なポイントです。テストに出ます!
当然、丸め加減の強弱によっても最適ベンチタイムは変わってきますし、行う成型の形によってもどれだけ緩ませた方がやりやすいか変わってきますよね。
ベンチタイムの本質を理解したところで、弾力の緩み具合を確認する方法をご紹介します。
軽く指の腹で押してみる
指の腹で生地の表面を、以下の点を意識しながら軽く押してみてください。
- 抵抗力はどのくらい?
- ふわふわ感はどのくらい?
- 成型しやすそうか?
フィンガーチェックのように指を突っ込むことは出来なくても、指の腹で押してみる程度なら問題ありません。
指で押したときに、明らかに弾力が強くすぐ戻るようであれば発酵不足ですので、追加で発酵させましょう。
もし成型作業を開始したときに弾力がまだ強く成型しづらいと感じたら、無理に完成させず一旦休ませるほうが安全です。
特にあんぱんやクリームパンのようにフィリングを中に詰める成型だと、ベンチタイム不足で無理やり包むと最悪の場合最終発酵の最中にとじ目が開いてしまいます。
生地表面の質感をチェックする
ベンチタイムの見極めでも、コチラの項目で解説したような生地表面の質感チェックが有効です。
丸め直後の生地感をしっかり覚えておきましょう。そこからどれくらい変わったのか?それを意識します。
ベンチタイムの時間に影響を与える意外な材料
ベンチタイムに必要な、つまり生地が緩むまでに必要な時間を長くしてしまう意外な材料があります。
それは、ご家庭でパン作りをされている方のほとんどが使っている「インスタントドライイースト」です。
特に生イーストのレシピをインスタントに置き換えて作った時にそのギャップを強く感じることになります。
インスタントドライイーストには製パン改良剤「ビタミンC」が添加されています。
ビタミンCには生地に酸素を取り込む効果があり、生地の骨格であるグルテンの酸化を促進してより丈夫で強い生地に変化させます。
ですが、生地の弾力が余分に強くなってしまうデメリットがあり、発酵具合を調整しないと成型で生地の縮みに苦労することになります。
例えば製パン技術書で紹介されているような基本的な菓子パン生地は、生イースト使用でベンチタイム15分です。
これをインスタントに置き換えて作った場合、弾力が明らかに強くなるため15分では足りないでしょう。
そして、世の中(特にネット上)にあふれる多くのレシピは元をたどれば業務用レシピが本家本元です。つまり生イースト使用レシピが原型となっているのですが、その名残でベンチタイムの時間も15分と指示書きされていることが多いです。
(もちろん配合によっては本当に15分で問題ない場合もあります)
一方で、インスタントをセミドライに置き換えて作る人も多いですが、セミドライイーストはビタミンCが含まれていない為、この場合は逆に弾力が弱く柔らかく感じます。
イーストの使い分けがベンチタイムにも影響を与えるということを頭に入れておいてください。
最終発酵(二次発酵)の見極め方
すごいふわふわで触るのもためらうし
見極めの中で一番苦手かも…
最終発酵は焼き上がりのクオリティに最も影響するため、最も重要な発酵工程です。
ですが当然フィンガーチェックは出来ない為、最も難しいとも言えます。
生地の表面の質感をチェックする
最終発酵の見極めでも、コチラの項目で解説したような生地表面の質感チェックが有効です。
生地をつぶさない程度に優しく指の腹で押してみて弾力を確認するのも重要です。弾力はかなり緩みふわっとした触感が感じられれば適正発酵です。
押した後、指の跡がほんの少しだけ残る程度が理想です。
<ここに最終発酵生地を触る画像>
※ベーグルなど元がかなり硬い生地の場合は例外です。食パンやバターロールなど基本的なパンと明らかに異なる生地感の種類の場合は、その都度レシピの詳細説明を確認しましょう。
天板を揺らしてみる
天板にのせて焼く小物パンであれば、天板ごとユサユサと揺らして生地の揺れ具合をチェックする方法が使えます。
発酵不足の生地に比べて、十分に発酵できた生地はプルンプルンと揺れ動きます。
生地表面の質感チェックと合わせて行うことで、より正確な見極めができます。
型の何割まで膨らんだか?
食パンなど型に入れて焼くパンで最も信頼できる見極め方が、大きさのチェックです。
例えば角食パンなら型の7割程度の高さまで、山食パンなら生地の頭が型の100%に達するまで、こういった基本的な目安があります。
しかし、これはあくまで基本的な配合において、型のサイズや生地量を守っている場合に限ります。
勝手に配合を変えたり生地量を変えてしまうとその目安では通用しなくなりますし、同じ型を使っていると思ったら微妙にサイズが違ったりすることもあります。
なのでその都度レシピの詳細を確認することをオススメします。
大きさで判断する場合の注意点
ロールパンなど中身の具材がないパン(生地パン)の場合は、膨らみの大きさで判断するのも容易ですが、あんぱんやクリームパンなど具材入りのパンの場合は注意が必要です。
それは、中身のフィリングは膨らまないということ。
膨らむのは皮であるパン生地だけなので、皮の厚さが2倍以上になることをイメージしましょう。
見た目の大きさがそのまま二倍以上になるまでと考えて待っていたら、過発酵になってしまう恐れがあります。
また、使用している粉が異なる場合も注意が必要です。
特にグルテンが少ない粉の場合、膨らみ可能上限がグルテンの多い粉に比べて小さいです。
その上限を超えたところを目標に膨らませようとしても、途中で見えないガス漏れが発生してそこまで膨らまないか、膨らむのにかなり時間がかかり過発酵となる恐れがあります。
特に角食パンでは、焼成時には生地のコシが完全に弱ってしまい全く窯伸びせず「角」が出来ずに小さな山型食パンになってしまう失敗もよくあります。
「国産小麦使用レシピ」など、元からそういった粉を使用するレシピで指示通りに作っているなら問題ありませんが、本来普通の強力粉で作るべきレシピで別の粉にアレンジして作るというケースでは、ガス保持力の差に注意しましょう。
じゃあ具体的にはどうすればいいの?
グルテン量の少ない粉に変える時は
生地量を増やしましょう!
日々の焼き上がりをよく観察しよう!
最終発酵の過不足は、焼き上がりの様子に大きく反映されます。
なので、発酵不足で焼き上がったパンの特徴と過発酵で焼きあがったパンの特徴をそれぞれ学んでおくことで、実際に完成したパンから発酵具合が最適だったか否かを学ぶことができます。
発酵具合の良し悪しをパンは正直に伝えてくれます。
パンは嘘をつかない!
もう発酵延長の判断に迷わない!最強の思考法を伝授します!
コツはわかったけど、それでも
延長して過発酵になるのが怖くて…
すごく微妙なラインのときって迷いますよね。
でもこの思考法を使えば大丈夫!
発酵不足の方が悪影響の大きいのか、過発酵の方が悪影響が大きいのか?
それはパンの種類や生地の配合によって変わってきます。
例えばクリームパンの場合、発酵不足だと閉じ目が開いてしまう可能性があるため、過発酵よりも悪影響が大きいです。
過発酵なら偏平な形になるか焼き色がやや薄くなるくらいの影響で済みます。
これなら、あと5分発酵を延長するかしないかで迷うくらいなら、延長を選択する方が安全です。
逆に夏場など室温が高い時に、捏ね上げ温度が目標より高くなりすぎてしまったなら、その後の全工程で発酵が進みやすくなります。
分割丸めや成型作業をしている間も発酵は進み、酵母菌の量も増え続け発酵速度が速くなります。
となると、一次発酵だろうと最終発酵だろうと、あと5分延長するかしないかで迷うほどの微妙なラインなら延長しない方が安全です。
発酵具合は自信あり!なのにふわふわパンが作れない…他の原因があるかも?
ふんわりパンが作れるか作れないか、その要因として発酵具合は確かに多くを占めています。
しかしそれだけでなく捏ね方やこね具合もとても重要で、この違いでパンの味まで変わってしまうのも事実です。
発酵具合の見極めには自信があるのにパン屋レベルのパンに近づけない…
そんなときは捏ね方など他の要因もチェックしてみてはいかがでしょうか?
まとめ
ここで学んだことをおさらいしましょう!
- 見た目やフィンガーチェックと同時に、生地表面の質感や抵抗力も意識する。
- ベンチタイムは生地の弾力が緩むまで、レシピの時間を鵜呑みにしない。
- 天板を揺らすことで最終発酵具合をチェックできる。
- 発酵延長の判断は、発酵不足と過発酵のどちらが痛手か考えると判断しやすい。
発酵の見極めが上手になることで、パン作りのレベルは確実にパン屋レベルに近づきます。
しっかりマスターして、ご家族やご友人をビックリさせるようなパンを完成させてください!