【臭くないドライイーストがあるって本当⁉】イースト5種類で比較!臭いや膨らみの違いを解説!

ドライイースト比較

お家でのパン作りはもちろん、今やベーカリーでも使われているインスタントドライイースト(以下、「ドライイースト」と省略)には様々な種類とメーカーがあります。

スーパーで手軽に買えるものもあれば、専門店でしか手に入らない本格派っぽいものまで様々です。

その中でこのような口コミが見られることも多々あります。

ドライイーストをサフに変えたらイースト臭が無くなった!

サフの方がよく膨らんで良いパンが出来る!

…はたしてこれ、本当なのでしょうか?

今回はドライイーストにまつわる様々なウワサの真相を検証すべく、種類の違う5種類のイーストでパンを作り比べてその違いを解説します。

比較する5種類のイースト紹介

ルサッフル インスタントイースト赤(通称「赤サフ」)

赤サフ インスタントドライイースト
引用:ルサッフル社

本格派ドライイーストとして知られる赤サフは、ベーカリーでも非常に多く活用されているイーストです。

砂糖の量が0~12%の低糖生地向けの酵母であり、低糖生地用の生イーストがあまり売られていない日本ではハード系用に多く使われています。

ルサッフル インスタントイースト金(通称「金サフ」)

金サフ インスタントドライイースト
引用:ルサッフル社

赤サフと対を成すこちらのイーストは耐糖性のため高糖生地に最適なドライイーストです。

日本に多く流通している生イーストは基本的に全て耐糖性のため赤サフに比べると利用率は少ない印象ですが、保存上および使用上の簡便さからあえてこちらを採用しているお店もあります。

推奨砂糖量は5%以上なので、日本のほとんどのパンで活用できます。

日清 スーパーカメリヤ ドライイースト

スーパーカメリヤ ドライイースト
引用:日清製粉ウェルナ

近所のスーパーでかなりの確率で売られているドライイーストと言えば、日清のスーパーカメリヤではないでしょうか?

多くのパン作り初心者が最初に使うイーストであり、その後サフのイーストに乗り換えるパターンが多い印象ですが、はたしてクオリティの差はあるのでしょうか?

共立食品 Home made CAKE ドライイースト

共立食品 インスタントドライイースト
引用;共立食品

スーパーの製菓材料売り場でよく見かける「Home made CAKE」シリーズのドライイーストです。

スーパーカメリヤほどではないにしろ、こちらも多くのスーパーで購入できる身近なイーストです。

KUKKU Baking ドライイースト

KUKKU インスタントドライイースト
引用:INIC MARKET

製菓製パン材料専門通販店「cotta」など一部でしか入手できない珍しい高級ドライイーストです。

他の4種に比べて1グラムあたりの値段が高い本品は、はたしてわざわざ使うほどの違いがあるのでしょうか?

それぞれのイーストの見た目や臭いを比べてみた

インスタントドライイースト比較

どれも細かな顆粒状である点は共通ですが、色味や臭い、粒の大きさが微妙に違っていました。

赤サフと金サフの違い
赤サフと金サフ 違い

イースト臭の違いについては感じられませんでしたが、比べると赤サフの方が少し暗い色味で、金サフはやや明るい印象です。

スーパーカメリヤの特徴
スーパーカメリヤドライイースト

スーパーカメリヤはサフと比べるとイースト臭特有の鼻にツンとくる感じがほんの少しだけ目立つ印象を受けました。

しかし非常に微々たる差であり、二回目に嗅いだ時には慣れたのか違いがあまりわからなくなりました。

そもそもサフにもイースト臭はあるので、とりわけどちらの方がキツイ臭いかをわざわざ言及するほどの差は無いように思えます。

色味は赤サフより明るく、金サフよりはほんの少し暗い色に見えますが微々たる違いです。

Home made CAKEの特徴
ホームメイドケーキドライイースト

こちらもサフに比べて顆粒がやや細かいです。

匂いは若干違うように感じましたが、臭さのレベルで言ったら同じ程度です。

こちらも色味は赤サフよりは明るく、金サフよりは若干濃く見えるという彩度が薄いように見えます。

KUKKU Bakingの特徴
KUKKU Baking ドライイースト

サフよりも顆粒が細かく、今回使用する5種類の中では最も色味が薄く明るい色でした。

驚くことに世間一般で知られている「イースト臭」は感じられず、代わりに独特な匂いがありました。

良い匂いというわけではありませんが、イースト臭特有の鼻にツンとくる感じは無く、人によってどっちの匂いが好きか意見が分かれそうです。

生地感の比較

今回の実験ではPanasonicのホームベーカリー「Bistro」で生地作りを行いました。

出来上がった生地のグルテン膜1を見てみましょう。

イースト比較 グルテン膜
イースト比較 生地感

どのイーストを使っても生地感にそれほど大きな差は感じられず、グルテン膜の状態も大差ありません。

なのでビタミンCの添加率に大きな差は無さそうです。

発酵具合の比較

一次発酵前の生地を25gだけ切り取って、ビーカーに入れて発酵速度を比較してみました。

イースト比較 フロア前

イースト比較 フロア1
60分後

イースト比較 フロア2
120分後

捏ね上げ直後の発酵速度は、明らかにKUKKUが遅く、そして意外にもスーパーカメリヤとホームメイドケーキはサフよりも発酵が早い結果が得られました。

最終発酵での発酵速度も比較してみましょう。

イースト比較 ホイロ後同時

これは冷蔵オーバーナイトした生地玉を成型後に30℃で90分発酵させた後です。

スーパーカメリヤとホームメイドケーキは焼成開始のベストタイミングですが、それ以外はまだ発酵不足なので追加で発酵させてみました。

イースト比較 ホイロ後

金サフは10分後、赤サフは16分後に、そしてKUKKUは何と86分後にようやく焼成可能な膨らみ具合になりました。

※KUKKUに至ってはまだ高さが足りないくらいですが、長時間寝かせたことで生地がかなり緩んだので仕方なく焼き始めました。

この結果からわかる通り、サフはとりわけ他のイーストより発酵が早いわけではないようです。

もちろん、イーストは生き物なので捏ね上げ温度の微妙な誤差や製造ロットによる活性の違いなど、様々な要素が発酵力に誤差を与えているはずです。

なので、今回の実験だけで結論付けることは出来ませんが、それにしてもこれだけ大きな差が開くのであれば「サフの方がよく膨らむ」という噂はあまり信用できないと言っていいでしょう。

加えて、生地を使った実験では赤サフより金サフの方が発酵力が高いという結果が得られてしまいましたが、理屈上これは不自然です。

今回の実験で用いた配合はあくまで低糖生地なので、本来は赤サフの方が発酵が早いはずだからです。

赤サフと金サフの発酵力を別の実験で比較してみました。

赤サフと金サフの発酵力の違い
水20g+薄力粉20g+イースト1g+砂糖

やはり無糖生地と低糖生地では赤サフの方が早く、逆に多糖生地では金サフの方が早い、理屈通りの結果が得られました。

今まで何度か同様の実験を行ってきましたが、やはり結果は同じでした。

じゃあなんで今回の製パン実験では赤サフの方が遅かったの?

実はロットの異なるイースト、そして個包装の商品を使用していました。

ロット違いで発酵力が大きく変わる可能性と、真空包装か否かの違いもあるかもしれません。

ナオキパン
ナオキパン

個包装は真空包装になってなかったな…

とはいえ、この比較で用いたイーストは元は真空包装されてたとはいえ既に数か月前に開封してビンで保存していたものです。

既に真空ではない状態で数か月経過していますから、やはりロットの違いや捏ね上げ温度の誤差などのあらゆる要素の積み重ねが原因でしょう。

焼き上がりの比較

イースト比較 焼き上がり

発酵が早いスーパーカメリヤとホームメイドケーキに比べて、サフの2種類の方が窯伸びが良いように見えます。

同じ膨らみ具合まで発酵させたのに窯伸びに差が出る原因として考えられるのは、より長時間寝かせたサフの生地の方がグルテンがより緩んで、程よく膨らみやすい柔らかな状態になっていた可能性です。

ナオキパン
ナオキパン

オーブン内の温度差による誤差もあるかも…

逆に寝かせすぎて生地の弾力が弱くなりすぎてしまったKUKKUは、自重を支えるコシが不足し窯伸びが極端に悪くなっています。

しかし、焼き色と香ばしさが最も優れているのもKUKKUです。

その理由は発酵力の遅さにあります。

酵母菌は糖を分解して炭酸ガスとアルコール(又は水)を生成するため、発酵が進むほど生地内の糖は減っていきます。

今回、最終発酵は生地の発酵具合に合わせて時間調整しましたが、一次発酵は全て同じ1時間に揃えました。

他4種の1時間とKUKKUの1時間では、後者は糖分の消費が少ないということになります。

故に焼成前の生地により多くの糖分が残り、メイラード反応がより進んで焼き色と香ばしさが向上したわけです。

メイラード反応って何?

ナオキパン
ナオキパン

こちらの記事で詳しく解説しています。

イーストが違うと味が違う!?

イースト比較 味の違い

KUKKU以外の4種は明らかに感じられる味の違いはありませんでした。どれも普通に美味しい基本の食パンです。

しかし、KUKKUだけ明らかに違いました。

  • しっとり・モチモチ感
  • 香ばしいクラスト
  • 甘い香りのクラム

しっとり感が向上したのは、他4種より最終発酵にかなりの時間がかかり生地時間2が圧倒的に延びたことが大きな要因でしょう。

イーストの量が同じでも、生地温度が低かったりイースト自体の発酵力が弱いこと等によって生地時間が増えれば、その分だけ水和もより進むためしっとり感が向上し老化も遅くなります。

そのしっとり感に加えて、膨らみが小さいことで生地の密度が高くなったことがモチモチ感に繋がりました。

そしてクラストのみならずクラムの香りも違いがありました。

他と比べて明らかに甘い香りが強いのです。

ホシノ天然酵母や塩麹をパンに使うことで得られるような香ばしさと甘味、それに近い印象が感じられました。あるいは予備発酵が必要なタイプのイーストにも近い印象です。


サフとカメリヤのイースト臭に差は無かったの?

ナオキパン
ナオキパン

明らかに感じられるほどの差はありませんでした!

KUKKU以外の4種も全く同じ匂いではないですが、その差は非常に微々たるものであり、「こんな感じの香りだった」と形容するのが難しいほどです。

焼き立て直後の香りを比較した時だけ、ほんの若干スーパーカメリヤからはイースト臭のような臭いを感じた気がしましたが、その後はほとんど感じられなくなりました。気のせいかもしれません。

イーストの種類が何であれ、保管状況やレシピ、作り方次第でパンは良くも悪くもなるということですね。


<脚注>

  1. パン生地の骨格であるグルテンは網目構造を成し、それはミキシングによって網目がより緻密になっていきます。その性質を利用して、生地の一部を薄く伸ばして膜の薄さや滑らかさをチェックすることでこね具合を確認することが出来ます。 ↩︎
  2. 粉と水が合わさってから焼成で「パン」になるまでの、この世に「生地」として存在している時間のこと(僕が作った造語です)。この概念を取り入れることでパン作りへの理解がグッと深まります。 ↩︎
この記事を書いた人
パン作り研究家
ナオキパン

当サイト及びYoutubeチャンネル「パン作りの教科書 / ナオキパンchannel」を運営。
パン作りのコツや製パン理論を科学的な観点からわかりやすく解説し、パン作り上達の楽しさを広めることに加え、正確な製パン情報の普及に努める。
ベーカリーや食パン専門店など数々のパン店立ち上げや現場責任者の経験有。
自律神経失調症によりパン業界を一時離脱した際に、自身の知識と経験が誰かの役に立つことを願い、2022年5月から本格的に情報発信活動を開始(現在は寛解しゆる~く復帰)。
パンシェルジュ一級。

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