手ごねでパン屋さんレベルのふわふわパンなんて作れないよね…
そんなことはありません!
実はパン作りの手ごねには正しいやり方があって、それを実践するのとしないのとでは生地のクオリティが大きく変わります。
知っているかいないかの違いだけでパン作りのレベルが大幅アップしますので、しっかりマスターしていきましょう!
- 正しい手捏ねのやり方とコツ
- 生地作りで重要な科学的メカニズム
読者・視聴者様の声
「ズリッとロール法」をマスターしたら
今まで見たこともない生地が完成して感動!
自分で作ったパンなのに、
「どこで買ったの?」って聞かれちゃった!
しっかり膨らむ生地作りに必要なのは”酸素”
パン屋レベルのふわふわパンを作るためには、発酵や焼成での膨らみを維持する「ガス保持力」の高い生地を作る必要があります。
そのために重要なのが、生地に“酸素”を取り込むことです。
えっ、なんで酸素!?
酸素は生地の骨格であるグルテンと密接な関係があります。
まずは酸素がどのような働きをするのか学んでいきましょう!
メカニズムを理解し、それを意識して捏ねることで
手ごねのクオリティが確実に上がります!
生地を強くする”酸素”
日清製粉中央研究所の研究によると、小麦粉生地を酸素がある環境と無い環境で捏ね比べたところ、酸素が無い環境では生地の弾力増加がほとんど見られなかったとのこと。
生地の弾力が弱いということは、生地の丈夫さに劣り、ガス保持力も低いということです。
では、なぜ酸素の有無が生地の発達に影響するのか?
それは、グルテンは酸素と結びつくことでより複雑な結合形態になるからです。
ところで、「生地を捏ねたり寝かせると生地が繋がる」という表現を聞いたことがありませんか?
これは、グルテンが酸化(グルテン酸化)することによってより複雑な結合が生まれることで、文字通り分子レベルで生地が強固に繋がってくるからです。
グルテン酸化をより効率よく促進できるミキシング、それは生地に空気を混入することが出来る動きです。
この記事では、手ごねで生地により多くの
空気混入ができるやり方を解説しています!
グルテン結合やグルテン酸化について、より詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
捏ね方の良し悪しがパンの出来栄えを左右する!
でも、捏ね方が上手くなくても
長時間ひたすら捏ねれば良い生地出来るよね?
そう思う方も多いでしょう。しかしこれは間違いです。
間違った捏ね方では1時間捏ねても良い生地にはなりません。
逆に良い捏ね方なら20分以内でミキシングが終わります。(更に短い時間で完成することも)
こちらの動画で良い捏ね方と悪い捏ね方で作ったパンをそれぞれ比較しています。捏ね方の重要性がわかるのでぜひ参考にしてください。
正しい手ごねのやり方とコツ
ウチは集合住宅だから
生地をバシバシ叩けないんだよね…
「良い生地を作るには叩き捏ねが必要」なんて言われることもありますが、そんなことはありません!
ここでは叩かなくても良い生地が作れる「ズリっと捏ね」について解説します。
手首を痛めないために!正しいフォームを身に着けよう
手ごねで手首を痛めちゃった…
それはフォームが悪いのかもしれません。
正しいフォームで行わないと、手首に余分な力が入ってしまうため危険です。
生地を作る前に、まずはエアーで手ごねの正しいフォームをクセ付けておきましょう!
生地に当てるのは手の付け根の部分
生地をズリっと引き伸ばす際、画像で示した手の付け根の部分(手根部)を生地に当てます。
一方、手の平から指にかけての範囲は生地に当てません。
フォームはこんな感じです。
手根部を生地に当てて、腕の骨一直線に体重をかけるように生地を押し出す。
上向きに手首をやや曲げているのもポイントです。もちろん、力まず自然な形で。
捏ね方NG例【手首を痛める恐れ有り】
このように手の平から指にかけての範囲を生地に押し付ける捏ね方は、無意識に手首を固定しようとする意識が働いてしまいます。
すると手首に大きな負荷がかかるため、痛めてしまう恐れがあります。
正しいフォーム画像とよく見比べて、ご自分の手ごねフォームをチェックしましょう。
手首を痛める捏ね方してませんか?手ごねの正しいコツを見直して安全に楽しみましょう! – YouTube
フォームを身に着けたら
いよいよ、生地で実践してみましょう!
生地の表面が破れるくらいズリッと!
先ほどのフォームを意識して生地に手根部を当てたら、生地を”ズリッ”と押し出します。
右手でズリッとやる時、左手の指で生地をしっかり押さえておきます。
その後、ズリ伸ばした生地を畳んだらすぐに再度ズリッと引き伸ばす。
これを連続でテンポよく行います。
「生地を破らないように捏ねる」
って聞いたことあるけど、大丈夫?
グルテンの繋がりを断ち切ってしまうのではないか?と考える方もいるでしょう。
しかし、グルテンの結合というのは分子レベルでの現象ですから、マクロな視点では断ち切っているように見えても、ミクロではちゃんとグルテンの繋がりが育っているので安心してください!
むしろ、生地の表面が破れることで表面積が一気に倍増し、より多くの空気を生地に取り込むことができるようになるため、結果としてグルテン酸化が促進され、良い生地がより早く完成します。
ミキサーの”高速”を再現できるテクニック
「ズリッと捏ね」を知って実践することで、生地のクオリティは大きく変わるでしょう。
しかし、パン屋レベルにふわっと大きく膨らむ生地を作るためには、捏ねモーションのスピード感が重要です。
上記までのやり方はあくまでミキシング前半の、まだ生地の繋がり感が弱い段階で行うモーションです。
ある程度捏ね進めて生地に弾力が出てきたら、ズリッと捏ねの進化系「ズリッとロール法」に移行しましょう!
←生地が破れるくらいズリッと引き伸ばす。
ここまでは同じ。
その後、生地を畳むのではなく手のひらで転がすように巻き取ります。
生地をズリっと伸ばした後、手を離さずそのまま手のひらで生地をロールします。
(結果的には畳んでいるのと同じですが、スピードが段違いです)
この動作を数回連続で同じ向きで行うと、生地が細長くなってきます。
生地が細長くなってきたら、向きを90度変えて同じことを繰り返します。
このテクニックをマスターすると、生地が完成するまでの捏ね時間が圧倒的に早くなります。
- 生地のまとまり感がまだ弱い時は「ズリッと捏ね」でグルテン酸化を促す
- 生地がまとまってきたら「ズリッとロール法」でスピーディにアプローチ
「叩き捏ね」は無くても良いの?
ほとんどのパン系Youtuberは叩き捏ねしてるけど…
結局、叩き捏ねって必要なの?
「叩き捏ね」はラクに良い生地を作れるやり方ではありますが、必須ではありません。あくまで「良い生地を作るため」という目的を達成するための数ある手段のうちの一つです。
そもそも叩き捏ねはミキシングの後半、ある程度生地がまとまってきてからでないと出来ませんよね。でないと生地が千切れて飛んで行ってしまいます(笑)
なので、叩きごねをやるにしても前半の捏ねを正しいやり方で行うに越したことは無いのです。
捏ね時間も短縮されるから
やっぱりマスターしておくべき!
とはいえ、ズリっと捏ねの欠点は“大きな生地だと捏ねるのが大変”という点です。
生地量250g程度までならズリっと捏ねで対応できますが、例えば粉量500gといった大量の生地だとズリっと捏ねだけではかなり大変です。そんな時は叩き捏ねを併用した方が楽です。
もし騒音問題が気にならないのであれば、ご自由に叩き捏ねも併用してください。
ただし、叩きごねにも正しいやり方と間違ったやり方があります。間違ったやり方では良い生地は絶対に出来ませんので、こちらの動画で正しいやり方をご確認ください。
まとめ
パン屋レベルのふわふわパンを作るための生地作りで重要なポイントをおさらいしましょう!
A.「酸素」。
酸素を生地に混入させ、グルテン酸化を促進させることがガス保持力の高い生地を作るのに重要です。
A.正しい。
破れることで表面積が格段に広がり、より効率よく生地に酸素が混入されます。
正しい手ごねをマスターして、ご家族・ご友人をアッと驚かせる素敵なパンを作ってみてください!