
強力粉なんてウチにないなぁ…
何か他の粉で代用できないの?
パンのレシピで使う小麦粉のほとんどが「強力粉」と指定されていますが、はたして他の粉で代用出来るのでしょうか?
- 強力粉の代用として使える粉があるのか?
- 代用する際の注意点
- 様々な粉の違いや特徴
「代用」の定義によって答えが変わる!
「強力粉 代用」と検索して出てくるサイトの多くは、
「〇〇粉は強力粉の代用になります!」
「代用にはなりません!」
といった具合に、白黒ハッキリと書かれすぎています。
しかし、代用出来るかどうか調べたくて検索している人の中には

全く同じものを作りたい!
作れないなら買いにいく!
と思っている人もいれば、

そこまで同じじゃなくてもいい。
レシピ調整もある程度は自分で出来そう。
というスタンスの人もいるはずです。
つまり、人によって「代用」という言葉の定義が違う、ということです。
この定義を事前にしっかり提示した上での回答でなければ誤解を招く恐れがあり、実際にそれが出来ていないサイトが多く、間違った認識が広まっている現状があります。
そのため当サイトでは、その部分についても誤解が無いよう丁寧に解説していきます。
故に、他のサイトに比べて文章が長めとなってしまいますが、正しい知識を得る為と思って上記のことを意識しながら読んでみてください。
薄力粉で強力粉の代用は出来るか?

薄力粉でパンは作れるの?
作れます。これは断言できます。
実際に薄力粉100%で作るレシピは存在し、強力粉では決して味わえない美味しさも味わえます。
薄力粉と強力粉の違いは「たんぱく量」です。
パン生地の骨格となるのは小麦粉に含まれるたんぱく質の結合体「グルテン」ですが、薄力粉は強力粉よりもグルテンが少ないです。
そのおかげで生地の作業性や膨らみが劣る一方で、歯切れ良く口溶けの良いパンが出来上がります。香りの印象も異なり、ホットケーキのような甘い香りが感じられます。
よって、全く同じものを作るための代用は出来ませんが、異なる美味しさが味わえる別物のパンを作ることは可能です。
薄力粉で作る際の注意点
薄力粉は強力粉に比べて吸水能力が低いです。
もし強力粉100gのレシピで水の分量が70gだったとして、強力粉を薄力粉にそのまま置き換えるだけだと非常に緩くベタつく生地になります。
もちろんそれはそれで非常に美味しいパンにはなりますが、かなり難易度が高いです。
作りやすい生地感にするには水分量を減らす必要があります。

実際にどれくらい減らせば良いの?
減らす量については、作りやすさと美味しさのバランスをどうするのかによって大きく変わってくるところなので、なかなか断言できるものでもありません。
美味しさを捨てずに作りやすさも追及して開発した薄力粉100%レシピをご紹介するので、まずはレシピ通りに作ってみて配合や生地感の参考にしてみてください。
薄力粉だけで作るパンのレシピ
薄力粉だけで作るパンレシピの多くは、
パサパサ・ふわふわ感が無い・風味が単調
といった傾向にあります。
ですがこのレシピは水分量を絶妙なバランスに調整し、オーバーナイト法を採用することでそれらのデメリットを解消したパンになります。
トーストすることで強力粉パンでは絶対に味わえない至高のサクみと口溶けを味わえますので、ぜひ作ってみてください♪
以下に配合と工程を提示します。
材料 | 重量(g) | BP(%) |
薄力粉 | 250 | 100 |
イースト | 3 | 1.2 |
食塩 | 5 | 2 |
脱脂粉乳 | 5 | 2 |
はちみつ | 25 | 10 |
ヨーグルト | 50 | 20 |
水 | 42 | 42 |
バター | 8 | 8 |
※バターは無塩バター使用
※ヨーグルトはプレーンヨーグルト使用
捏ね上げ温度 | 24℃ |
一次発酵 | 27℃ 10P |
一晩冷蔵 | |
分割丸め | 228~230g |
ベンチタイム | 約30分 |
生地温度17℃以上に復温 | |
成型 | 楕円丸め |
最終発酵 | 35℃ 60分~ |
時間より膨らみ具合で判断 | |
焼成 | 210℃ 24分 |
中力粉で強力粉の代用は出来るか?

中力粉でパンは作れる?
こちらも答えは「作れる」です。
強力粉・中力粉・薄力粉は一般的には「たんぱく量」で分類されています。
少|薄力粉<中力粉<強力粉|多
薄力粉よりもたんぱく量は多いため、薄力粉のみで作る場合よりも水分量の調整幅は小さく作りやすいと言えます。
ただし、意外と知られていないことなんですが、これらの違いはたんぱく量だけではありません!
(銘柄にもよりますが)焼き色の付き方や風味の印象など、あらゆる点で違いがあります。
中力粉は主にうどんを作ることに最適化されている場合が多く、以下のような傾向にあります。
メリット
- しっとり感(保水性)が高い
- モチモチ感がある
デメリット
- パンらしい香ばしさに欠ける
- 焼き色が付きにくい
そのため、全く同じパンを作ることは出来ませんが、別物のパンを作ることは可能です。
中力粉で作る際の注意点
全ての中力粉に当てはまるわけではありませんが、多くはうどん用に製造されているため焼き色・香りの点で劣る傾向があります(ハッキリとわかるレベルで)。
なのでそれを補うためにも、
- 脱脂粉乳を増やす(イチバン簡単)
- 牛乳や卵を使う(水分量の計算、吸水量の調整が必要)
といった調整をして焼き色・香りを補うことをオススメします。
また、薄力粉と同様に吸水能力は強力粉よりも低いため、レシピの水分量を少し減らす必要があります。
準強力粉で強力粉の代用は出来るか?
準強力粉は主にフランスパンなどハード系のパンを作る際に使われる小麦粉で、「フランスパン専用粉」とも呼ばれます。
なので当然ですがパンは作れます。そして、実はハード系だけでなく食パンなどソフト系のパンを作ることも可能です。
一般的に準強力粉は「たんぱく量が強力粉と中力粉の中間」と言われています。
しかし実際には銘柄ごとに様々で、そもそも「強力粉」と謳われている商品であっても準強力粉よりたんぱく量がかなり少ない製品もあったりして、分類の境界には決まりがあるわけではありません。
かといって、準強力粉と強力粉でたんぱく量の数値が全く同じものが2種類あったとしても、同じものが作れるとも限りません。
準強力粉は美味しいハード系を作れるように製造されたものであり、一般的な強力粉よりも酵素活性や灰分が高い傾向にあるため生地感が微妙に異なる可能性が高いです。
よって、全く同じものは作れないけれど薄力粉や中力粉よりは近いものを作れる可能性が高く、強力粉では得られない美味しさも得られます。

粉によってその性質は全然違うから
名称よりも本質で判断しましょう!
準強力粉で作る際の注意点
強力粉100%のレシピを準強力粉に置き換える場合、やはり吸水能力は少し低くなるので水分量を減らす必要があります。
とはいえ、薄力粉ほどではないのでだいぶ作りやすいでしょう。
「どのくらい減らせばいいのか」については、使う準強力粉の銘柄次第で大きく変わります。
目安はたんぱく量。これが少ないほどグルテンも少ない場合が多く、吸水能力も少なくなる傾向があります。
しかし灰分が高い粉の場合、たんぱく量のわりに吸水能力がそんなに高くないこともありますので、あくまで目安程度に捉えておいて、実際の最適吸水量は一回試しに作ってみて確認するしかありません。

たんぱく量が多いのに吸水能力が少ないってどういうこと?

グルテン以外のたんぱく質が多く含まれていると、数値ほどの吸水や生地感が得られないです
国産小麦で強力粉の代用は出来るか?
国産小麦と一言で言っても、その特徴は銘柄ごとに様々です。
「国産強力粉」と謳われている粉であっても、たんぱく量や給水能力など実態は準強力粉と同等でもはや強力粉とは言えないようなものもあります。
とはいえ、代用として使いやすいものも中にはあります。
それは「ゆめちからブレンド」のような、いわゆるブレンド系です。
ゆめちからブレンドは北海道産の超強力粉「ゆめちから」という非常にグルテン量の多い粉をベースに複数の国産小麦をブレンドしたものです。
ゆめちから単体だとグルテンが多すぎるが故にコシが強すぎてかえって膨らみの悪い生地になりますが、グルテンの少ない他の粉と混ぜることで丁度いい塩梅になります。

たんぱく量の少ない国産小麦の活躍の幅を広げるために開発された品種とも言えます
また、「春よ恋」の後継品種である「はるきらり」は、非ブレンド品であっても高いグルテン量により他の外国産強力粉に引けを取らない製パン性を誇ります。
「春よ恋」はメーカーや時期によって差があるため一概には言えませんが、それでも他の国産小麦に比べると外国産強力粉に近い製パン性が得られる方ではあるので、有力な候補の一つです。
故に、国産小麦は銘柄によっては強力粉の代用として十分使えると言えます。
国産小麦で作る際の注意点
銘柄によってはたんぱく量が「強力粉」とは言えないような、準強力粉レベルの粉が「国産強力粉」と謳われている場合があります。

テリア特号、ゆきちから、ミナミノカオリなど…
そのような粉を「同じ強力粉」だと思って強力粉100%のレシピで置き換えると、ベタつきが強く弾力も緩い生地が出来てしまいます。
もちろん国産小麦に限らず全ての粉に言えることですが、たんぱく量の数値が一般的な外国産強力粉に比べて少ないようであれば、水の量を少し減らして捏ね始めることをオススメします。
僕の経験上、そのような国産小麦の方が味の個性がハッキリしていて非常に面白いので、ぜひ使ってみて欲しいです。
米粉で強力粉の代用は出来るか?

米粉は小麦粉と違って、グルテンの元になるたんぱく質「グルテニン」「グリアジン」が含まれていません。
そのため、強力粉の代用としてパンを作ることは出来ません。
最近ではグルテンフリーの米粉100%パンというものが普及していますが、これはドロドロの米粉生地を発酵させて焼くというもので、生地感はパンというよりケーキです。
サイリウム(オオバコ粉末)を使えば手で成型できる生地になりますが、小麦生地のような「良く伸びて弾力のある」質感にはならず、仕上がりも全くの別物です。
小麦パンと米粉パンは、同じパンという呼び名でありながらも実態は全く別の食べ物だと認識すべきです。
ただし、グルテン粉末を添加した米粉生地であれば、小麦パンと似た生地感でパンが作れます。
このとき吸水能力はグルテン粉末の添加量や仕様する米粉の種類によって大きく変わってきます。
また、強力粉と薄力粉をブレンドして作るレシピのように、強力粉の一部を米粉に変えてブレンドして作ることは可能です。
この場合も強力粉100%とは別物になりますが、また異なる美味しさが味わえます。
こちらの動画で強力粉と米粉をブレンドした際のパンの違いについて解説していますのでぜひご覧ください。
米粉で作る際の注意点
強力粉と米粉のブレンドで作る場合、米粉にグルテンの元となるたんぱく質が含まれていない分、米粉を増やすほど吸水能力も低くなり膨らみも劣ります。
レシピの水分量調整は必須で、ブレンド割合も多くて2割までがオススメです。
それ以上増やすとグルテン量が少なくなりすぎて作業性の悪化はもちろん膨らみが著しく劣ります。
使用する強力粉もなるべくたんぱく量の多い粉を使うべきで、最強力粉や超強力粉がおすすめです。
また、米粉と小麦グルテン粉末で作る場合、生地のコシが強い一方で生地がデリケートでもあります。
時間経過による生地感の劣化が出る恐れもあり、一次発酵をとらずに捏ね上げ後すぐに分割丸めに移るべき場合もあります。

僕がいた店の米粉生地も
一次発酵ナシで即分割でした
捏ねはじめの生地感もまるで白玉生地のようで、「こんなの本当にパン生地になるの!?」と疑いながら捏ね続けると急にパン生地らしさが出てくる…
それほど小麦生地とは大きく異なる質感なので、まだ米粉生地を扱った経験がない方はまずは米粉専用レシピで正解の感覚をつかむことをオススメします。
片栗粉やコーンスターチで代用できる?


片栗粉はジャガイモのでんぷんを抽出したもので、コーンスターチはトウモロコシのでんぷんを抽出したものです。
そのためどちらもグルテンが形成されないため、強力粉の代用は不可能です。
同じく米粉にもグルテンはありませんが、米のたんぱく質が含まれています。
片栗粉やコーンスターチにはたんぱく質がほとんど含まれておらず、またでんぷんの質もそれぞれ米粉とは全然異なります。
そのため米粉の代用として使うことも難しいでしょう。
しかし、「雲パン」という焼き菓子では片栗粉を使うものもあります。
これはパンというよりメレンゲ菓子なのですが、元々強力粉で作るものではないのでレシピとして成立しています。
まとめ
ここで学んだポイントをおさらいしましょう!
- あらゆる粉は強力粉とは別物なので、完全に同じものを作るための代用は不可能。
- 別物としてのパンを作ることは可能で、それぞれ違った美味しさがある。
- たんぱく量の数値を見て、おおよその水分量を判断して作る。
粉の違いを上手に使いこなすには、グルテンの仕組みについて詳しく知ることが必要です。コチラの記事で解説しているのでぜひご覧ください。