クリームパンが破裂してクリームが噴火した…
焼く前からとじ目が開いてクリーム漏れてた…
このような失敗で困った経験ありませんか?
この記事では、クリームパンが破裂してクリームが漏れてしまう原因とその対処法について解説します。
読者・視聴者様の声
毎回必ずクリームが漏れて失敗してたのに、100%成功するようになった!
対処法を実践したら、ついでにクリームの味も良くなった!
クリームパン失敗の原因ランキング
クリームの水分量が多い
最も多い原因がクリームの水分量が多すぎることです。
- 炊き込み不足
- 粉不足・牛乳過多
特に多いのが炊き過ぎを怖がって炊き不足となっているケースです。
次に多いのが小麦粉やコーンスターチが少なかったり、牛乳(又は他の乳製品)が多すぎるケースです。
当然ですが粉が無ければ生地に包めるクリームは出来ません。
粉のでんぷんが加熱により牛乳の水分をしっかりと抱き込む(α化する)ことで、初めて生地に包めるクリームとなります。
より軽やかな口当たりのクリームにしようと粉を減らすアレンジを加える人がいますが、やはり必要最低限は入れないと難易度が爆上がりします。
コチラの記事ででんぷんのα化について詳しくご覧いただけます。
クリームにおけるでんぷんのα化も、パン生地におけるでんぷんのα化も基本は同じ!
炊き不足であったり粉を減らしていても、包餡作業が上手な人や包む量を極端に減らせば包めてしまう場合があります。
しかし、仮に成型に成功してもクリームから蒸発した水分の膨張は凄まじく、どんなに良い生地であっても膨張に耐えられず噴火したり、とじ目をこじ開けてクリームが漏れてしまう結果になるリスクが極めて高いです。
対策:しっかり炊き込む
まずはクリームをしっかり炊き込むよう改善しましょう。
加熱していくと粉のでんぷんが水分を吸うことで粘度が増して流動性が低下します。
一度は重たい感じになりますが、そこで加熱を辞めてしまうと滑らかさに欠けた口当たりになるので、沸騰してからもうしばらく加熱し続けましょう。
コシが切れて再度流動性が増し、艶やかな質感になります。
そこまで炊き込むことで初めて、滑らかな口当たりでありながらも包みやすいクリームになります。
対策:粉を減らさない
牛乳100%に対して薄力粉10%使うのが基本だと捉えましょう。
これでしっかり炊けていればクリームが漏れ出すリスクはかなり少ないはずです。
けど口当たりがもったりと重たい感じがする…
それならコーンスターチと半々で作ってみよう!
薄力粉のみで作ったカスタードクリームは滑らかな口当たりを得やすい反面、もったり重たい食感が特徴的です。
一方でコーンスターチを使うことで軽やかな食感を得ることが出来ます。
オススメは薄力粉とコーンスターチを半々でブレンドすること。
滑らかさと軽やかさが丁度いいバランスになります。
対策:クリーム後注入にする
まるでシュークリームのようなクリームパンにしたいんだけど…
シュークリームはそもそも生地を焼き上げた後にクリームを注入しているから、ユルユルなクリームやホイップでも成立するのです。
それを再現したいのであれば、クリームの後注入を採用しましょう。
ただし、中身を全て後入れの軽いクリームにすることはオススメしません。
シュー生地はとても軽い食感だから中身がユルくても美味しいのですが、パン生地はシュー生地よりも食感・味ともに主張が強いため、ユルいクリームはパンに負けてしまいます。
なので一旦は通常のクリームを包んで焼き上げ、その後にディプロマットなど軽いクリームを後注入して2層構造にするのが望ましいです。
これならクリームの主張もある程度は確保できるため、パンに負けて薄い印象になることも防げます。
クリームパン向きの生地ではない
次に多い原因が、そもそもクリームパン向きの生地を使っていないパターンです。
僕も以前によくやった失敗の一つです…
パン生地には様々な種類がありますが、フィリングを包むのに向いた生地と不向きな生地があります。
フィリングを包むのに向いた生地の条件は以下の二点です。
- 伸展性に優れる
- 弾力は強すぎないが程よい丈夫さがある
この二点を十分に満たしたバランスの良い生地、それがいわゆる「菓子パン生地」です。
菓子パン生地は砂糖が25%前後の高配合で、油脂も10%以上入るため伸展性の向上に重きを置かれた配合です。
様々な製パン技術書で紹介される菓子パン生地がどれも似たような配合になるのは、これが最も菓子パン向きだからです。
その配合から離れれば離れるほど、クリームパン作りに不向きになると言えます。
不向きになる原因は非常に多いです。
様々な狙いで砂糖・油脂を減らして作りたがる人も多いですが、全ての材料には役割があるため無暗にアレンジすると失敗の元となります。
材料の役割についてしっかり理解しておくことで、特定の材料を減らしたいときにどんな調整をするべきかわかるようになります。
対策:クリームパン向きの生地を使う
やはり一番失敗がないのは、基本的な菓子パン生地で作ることです。
砂糖を減らしたり、バターを減らしたりしたくなるところですが、そういったアレンジを一部加えると必ず他の部分も調整する必要が出てきます。
ここに一般的な菓子パン生地の配合をお見せします。
材料 | BP(%) |
強力粉 | 100 |
生イースト | 4 |
上白糖 | 25 |
食塩 | 0.8 |
脱脂粉乳 | 3 |
全卵 | 10 |
水 | 50 |
油脂 | 12 |
砂糖が20%以上、油脂は10%以上のリッチ配合です。
そして生イーストはビタミンC無添加のため、インスタントドライイーストのように無駄な弾力も付きません。
これにより生地の伸展性が向上し、クリームパン向きになります。
生イーストは流石に買えないなぁ…
お家で作るなら「セミドライイースト」がオススメ!
対策:イーストの種類を変える
お家でのパン作りで最も多く使われている「インスタントドライイースト」には、ビタミンCが添加されています。
これは酸化剤という製パン改良剤の一種で、グルテン酸化3を促し弾力の強い生地にする作用があります。
食パンのように上に高く膨らませたい場合には有効ですが、クリームパンのように伸展性が求められるパン作りでは強すぎる弾力でかえって作りづらい原因となります。
ビタミンC無添加のイーストに変えるだけで、同じ配合でも生地は驚くほど扱いやすくなります。
発酵不足
特に最終発酵不足の場合、クリームの水分量が適正であっても漏れ出す可能性が高くなります。
クリームパンの成型は、麺棒で薄く伸ばすことで生地に強い圧力を加えます。
それによりグルテンが鍛えられ生地の弾力が増します。
弾力が強いということは、元に戻ろうとする力(抗張力)が強いということです。
成型で増した弾力は最終発酵を十分に設けることで落ち着かせる必要があります。
それが不足すると生地の伸展性に劣り、内部の熱膨張に耐えられずとじ目がこじ開けられてしまい、そこからクリームがはみ出ます。
対策:最終発酵の見極めをマスターする
最終発酵で十分に生地の弾力が落ち着いたかどうかをチェックしましょう。
発酵の見極めについてはこちらで紹介しています。見た目の感覚だけでなく、生地を触って見極められるようになると失敗が本当に少なくなります。
あと10分延長するかしないかで迷うことがあるんだけど…
クリームパンは過発酵より発酵不足での失敗リスクの方が大きいので、迷ったら延長が無難!
対策:ベンチタイムを十分にとる
ベンチタイムが不十分だと、伸ばしてもすぐ縮んだりしてとても成型しづらいです。
これだとクリームをたっぷり包むことは至難の業です。
仮に成型が上手でなんとか包めたとしても、無理やり成型した生地にはかなり強い抗張力が残ります。
すると最終発酵で生地の弾力が緩むより先にとじ目が開いてしまうリスクがあります。
時間通り休ませてるはずなんだけど…
時間よりも緩み具合で判断しましょう!足りなければ何分でも追加!
「二度伸し」で作る
麺棒で薄く伸ばす作業は、それだけで生地に強い弾力を与えます。
一度に伸ばすと生地縮みが見られる場合があります。
その場合、最初は軽く伸ばして(仮成型)、一旦休ませてから二回目に本格的に伸ばしてクリームを包みましょう。
パン屋さんでも頻繁に用いられるテクニックです。
仮成型の後は何分くらい休ませる?
生地によって違うので、触って緩みを確認できた時が目安です。
生地が硬い
初心者でよくある失敗ですが、特に菓子パン生地は捏ね始めがベタベタしているためか、皆さん不安になって粉を追加してしまいます。
(計量ミスさえ無ければ)諦めず捏ね続ければ良い生地になるのに、粉を追加してしまうことでレシピの想定より硬い生地になってしまいます。
そうなると、レシピ通りの発酵時間・発酵具合で進めても焼成時の膨張に耐え切れず、とじ目をこじ開けてクリームがはみ出てしまう可能性が高まります。
最悪、最終発酵後の段階で既にとじ目が開いてしまう場合も。
それならとことん発酵させて生地を柔らかくすれば良いのでは?
それだと過発酵で味・香り・焼き色の全てが劣るリスク大です!
なのでミキシングで粉を追加せず、レシピ通りの配合を極力守るよう心掛けることが重要です。
対策:手ごねを改善してレシピ通りでも作れるようにする
「ベタベタだと捏ねられない」と感じるなら、そもそも捏ね方が間違っている可能性が高いです。
正しい捏ね方と良い道具を使っていれば、ベタベタ生地も難なく捏ね上げることができます。
こちらの記事で手ごねの極意を解説しているので、まずは生地作りの基本から見直してみてください。
こね不足
捏ね不足だとグルテンの繋がりが弱く、生地の伸展性と丈夫さに劣ります。
内部膨張にあわせて伸びる事が出来ず、かつ生地が脆いとなると、焼成中に表面に穴が開いてクリームが噴火する可能性が極めて高いです。
特に捏ねない製法で作った生地にクリームをたっぷり包んで薄皮となった場合、確実に破裂するでしょう。
対策:まずは基本の菓子パン生地でマスターする
捏ねないパン作りは、体力的にはラクですが美味しく上手に作るとなると理屈上はとても難しいものです。
しっかり捏ねて作るパン作りなら、とりあえずレシピ通りの配合でしっかり捏ねればそれなりのものは確実に作れるはずなので、まずそれをマスターすることをオススメします。
黄金比の加糖中種法でこね不足を99%回避!
そうはいっても菓子パン生地の手ごねは初心者向けとは言えません。
ですが、僕が開発した黄金比の中種法なら、比較的ラクに上質なこね具合の生地が作れます。
切り込みは必要?
クリームパンの多くはグローブ型で切込みが入っています。
この切込みには中身の蒸気を逃がして破裂防止の効果があると言われていますが、基本がしっかり出来ていれば切込み無しでも問題なく作れます。
実際、あんぱんのように丸く包んでそのまま焼いて作るお店だってあるくらいです。
ただし、基本の菓子パン生地よりもリーンな配合の生地を使いたい場合は話は別です。
カレーパンの例だと、リーンな生地で丸く包んで中心に十字カットをいれて焼き上げるお店も多いです。
これはフィリングを包むのに向いていない生地でも失敗なく作ることが出来るテクニックです。
クリームパン成型のコツ
生地よりも多く包んでもクリームがはみ出ないポイントが詰まった動画です。
パン職人さんは「あんべら」を使ってクリームを包むのが一般的ですが、クリームたっぷりにするお店ではこのように絞り袋を使って充てんする場合もあります。
クリームパンの成型が苦手な方はぜひ参考にしてみてください
まとめ
ここで学んだポイントをおさらいしましょう!
- 粉を10%は使ってしっかり炊き込んだクリームを作るのがポイント。
- クリームパン向きの生地かどうかを今一度見直す。
- 十分に緩むまで発酵させること。
- 手ごねで粉を加えずレシピ通り作れるようになること。
クリームパンの失敗を防ぐ方法の多くは、パン作りの基本的な部分の改善が必要です。
これが出来れば全てのパン作りでレベルアップしたとも言えるので、ぜひ諦めずトライしてください!
<脚注>