【業務スーパーの強力粉】膨らまないのは本当?その原因と対策をプロが解説

業務スーパー強力粉

業務スーパーの強力粉って
ちゃんとパン作れるのかな?

あまりの安さに不安を抱き、手が出せない方も多いでしょう。

この記事では、業務スーパーの強力粉で美味しいパンは作れるのかどうか、実際の比較実験を元に解説します。

この記事を読むと…
  • 業務スーパーの強力粉の正体がわかる
  • 上手く作れなかった原因と対策がわかる

読者・視聴者様の声

「美味しいパンは作れる」って聞いて、思い切って買ってみたら本当だった!

ポイントを見直して再チャレンジしたら、業スー強力粉でも問題なかった!

実際、業務スーパーの強力粉は膨らまないのか?

こちらが実際の実験動画です。

サムネイル画像を見た時点で、業務スーパーの強力粉でもしっかり膨らんでいるのがわかりますね。

もちろん焼成後もちゃんと膨らんでいます。

結論、業務スーパーの強力粉でも十分に美味しいパンは作れます。

業務スーパー強力粉と普通の強力粉の違い

一般的に「普通の強力粉」として認知されているのは、たんぱく量が12%前後でカナダ産・北米産小麦を主体に製粉された「カメリヤ」や「イーグル」などです。

そして、実は業務スーパーの激安強力粉の製粉会社は「イーグル」と同じ日本製粉です。

製粉会社が同じで、たんぱく量も同じ12%、実際の作ってみた感じもほとんど差は無い。

もしかしたらこの二つの値段の差は企業努力によるもので、中身はそんなに大差ないのかもしれない、そのように感じました。

大手スーパーの商売戦略

大手スーパーに行くと、お馴染みの大手食品会社の商品が並ぶ隣にスーパーの自社ブランドの商品も置かれているのを目にしますよね。

そして、その区画の中では最も安いことがほとんどです。

どうやら大手食品会社に「お宅の商品をウチに置くから、代わりに自社ブランドとして良いもの安く作ってくれよ」といった圧力交渉が裏で行われているパターンもあるんだとか…

高い粉と安い粉の違い

イーグルと業務スーパー強力粉の比較では目立つ違いは見られなかったですが、一般的には同じたんぱく量なのに値段の差がある場合、「灰分」に違いがあることが多いです。

灰分とはミネラル分のことで、小麦粒の外側に近い部分ほど多くなります。

小麦粉は用途別にいくつかの等級に作り分けられており、小麦粒の最も内側の部分しか使わない特等粉から順に、一等粉・二等粉・三等粉・末粉の順に粒の外側部分を多く含むようになります。

主に製パン用強力粉として市場に出回っている多くは一等粉や二等粉レベルの粉で、特等粉はかなり値段が上がります。

小麦粉の等級
全粒粉
外皮や胚芽も含むのが「全粒粉」

同じ北米・カナダ産主体でたんぱく量も大きく違わないのに値段が微妙に違う、そんな2種類の粉を販売している製粉会社も多いです。

むしろ、たんぱく量の数値は値段の高いものの方が若干少ないくらい。

なぜ値段が違うのか?これらをよく見るとやはり安い方が灰分が高いのです。つまり、この値段の差は等級の差と言えます。

等級が低い粉は小麦の外側に近い部分をより多く含むため、以下のような傾向があります。

  • 穀物のワイルドな香りが強い
  • 酵素活性が高く生地のでんぷん分解が進みやすい
  • たんぱく量の数値のわりにグルテンはそこまで多くない

逆に等級が高い粉は以下のような傾向があります。

  • クリアで上品な印象の香り
  • 酵素活性が低く、工場生産でのコントロールが容易
  • たんぱく量の数値のわりにはグルテンが多い

等級が低い粉にはグルテンの元となる「グルテニン」「グリアジン」以外のたんぱく質も豊富に含むため、たんぱく量の数値の割にはグルテンが多くなく、さらに酵素活性も高い場合が多く生地がダレやすいなど、製パン性は高等級の粉に比べて劣ります。

かといってどちらが良い悪いというものでもなく、作りたいパンに合わせて上手に使い分けることが重要です。

なぜ膨らまないのか?

コチラの項目でわかる通り業務スーパーの強力粉で作ってもパンはしっかり膨らむはずですが、ネット上には「膨らまない」という口コミが多々見られます。

しかし、ヤフー知恵袋などでそういった声を挙げている人の詳細な作り方を見てみると、問題は粉ではなく作り方にある場合が多い印象でした。

例えば45℃以上の高すぎる温度の水にイーストを溶かしていたり…
そもそも仕込み水の温度を正確に計っていなかったり…
そんな初歩的な間違いをしているのであれば、当然捏ね不足や発酵不足であることも疑えます。

パン作りのあらゆる失敗を詰め込んだ作り方を普段からしていると、たとえ毎回レシピ通りで作っているつもりでも、温度や計量のズレなどによって実際には全くレシピ通りに出来ていないことにもなります。

粉を業務スーパーに変えてみたタイミングでたまたま悪い原因が重なり失敗し、それを改善する正しい方法を知らないから間違った対処法を重ねて更に失敗が悪化し…

結果として「粉を変えたからダメなんだ」に行きついてしまうのです。


もちろんレシピ自体が悪い場合もあります。

ネット上に転がっている素人投稿のレシピサイトには「ハズレが多い」とよく聞きます。

そんなレシピを使ってきた人が、良質なレシピを使ってみたら「業務スーパーの粉でも上手に出来ちゃった!」と感想が一転しちゃうパターンもよくあります。

これは業スー粉に限らず、扱いの難しい国産小麦などあらゆる粉でも同じことが言えます。

結局、あらゆる粉に対応できるだけの正しい基礎知識があるか無いかの差ということです。

以下に初心者の方が見落としがちな、膨らまない(と思ってしまう)原因についてざっと解説します。

0.1g単位で計量していない

デジタルスケール

粉や水のように使用量の多い材料なら1g単位でも大丈夫です。

しかし使用量の少なく、発酵速度に強い影響を及ぼすイーストと塩は0.1g単位で計量することが重要です。

なぜなら1g単位での計量だと画面に「1g」と表示されていても、それは1.9gかもしれないからです。

粉量100gで作る場合、イースト量が1.0gと1.9gでは発酵速度は単純に2倍近い差があります。

これだと、普段はイースト量を過剰計量して作っていた人が、たまたま粉を変えたタイミングで正確に計量出来ちゃった場合、普段よりイーストが少ないことになり「膨らまない」と勘違いしても無理はありません。

0.1g単位で計量できるデジタルスケールを購入するか、どうしてもまだ購入に踏み切れないなら最新の注意を払って1.0ピッタリになるようイメージで計量するようにしましょう。

ナオキパン
ナオキパン

僕は0.1g計を使い始めた途端に
レベル50くらいアップしました(本当です)

水の量を減らしたり粉を加えたりしている

例え同じレシピを使っているつもりでも、「捏ね始めベタつくから」と言う理由で水を減らしたり途中で粉を加えたりするのはよくある失敗例です。

水を減らして作る、なら途中で加水すればまだ良いですが、途中で粉を加えてどんどん硬い生地にしていくと膨らみにくい生地まっしぐらです。

これってつまり、”レシピ通りに作っていない”ということです。

その作り方を毎回やっているとしたら、毎回同じパンに仕上げるのは至難の業です。

本来、たとえ生地がベタベタでも、正しい捏ね方を習得していれば生地を捏ねることは可能です。

まずは水を減らしたり粉を加えなくても済むよう、正しい捏ね方のコツをコチラの記事で学びましょう。

こね不足・捏ね方が悪い

手ごね

生地のこね具合が不足していると、ガス保持力の弱い生地になるため膨らみの悪いパンになります。

実は粉によって必要な捏ね時間は前後します。

例えば薄力粉100%の生地は強力粉生地よりも圧倒的に短時間で生地が完成しますし、でんぷんの質が個性的な「キタノカオリ」など一部の国産小麦は普通の強力粉よりもミキシングに時間がかかります。

それだけ粉の違いはミキシングに影響を与えるため、初心者の方は粉を変えた途端に上手く作れなくなることが多いです。

捏ね時間をキッチリ守るよりも生地の状態で判断することが重要です。


また、そもそも捏ね方が悪いために何十分捏ねても良い生地にならないパターンもあります。

本来ミキシングは20分以内に終えることが理論上望ましいです。

それ以上時間をかけると発酵により発生したガスが圧力を分散してしまうためどんどん効率が悪くなるからです。

稀に「1時間も捏ねたけど全然ダメでした!」といった声を聞きますが、完全に悪循環にはまっている証拠です。

まずは自分の捏ね方に問題が無いかどうか確認し、正しいコツをマスターしましょう!

生地の温度を気にしていない

使う水の温度をちゃんと計測したり、お部屋の温度を一定に保ったりするのはもちろん重要ですが、何よりも重要なのが「生地温度」です。

生地の発酵速度は水の温度でもなく室温でもなく、その時の生地の温度ですべて決まります。

例え夏でも生地の温度がその時20℃しか無ければ、その生地は20℃レベルの発酵速度にしかなりませんし、逆に冬でも32℃になってしまえば32℃レベルでどんどん発酵が進みます。

水温や室温を調整するのは、全て生地の温度をコントロールするための一つの手段でしかありません。

普段から生地の温度を気にかけたパン作りが出来ていないと、たまたま粉を変えたタイミングで生地の温度を低く作ってしまい「膨らまない」と勘違いすることも不思議ではありません。

発酵具合の見極めをしていない

一次発酵・ベンチタイム・二次発酵…
全ての発酵を「時間」でキッチリ守っていませんか?

ナオキパン
ナオキパン

「時間」を守りすぎるのも
失敗のよくある原因です!

もちろん、レシピの指定通りの生地温度で完璧に管理出来ているなら、時間さえ守ればうまく作れるでしょう。

ですが、生地温度が1℃変わると20分差が生まれると言われるくらい、発酵速度は簡単に変わってしまいます。

大事なのは時間を守ることよりも「発酵具合」で判断すること。

フィンガーチェックや生地肌の質感など、見極め方の基準はたくさんあります。

知っているかいないかの差で発酵見極めスキルは大きく変わります。

コチラの記事で様々なコツをご紹介しているのでしっかりマスターしましょう!

まとめ

ここで学んだポイントをおさらいしましょう!

  • 業務スーパーの安い強力粉でも美味しいパンは作れる
  • 同じ産地・同じ製粉会社で値段の差があるのは等級の差か企業努力か
  • 「膨らまない」理由の多くは粉ではなく作り手の問題

パン作りの基礎を身に着けてさえいれば、業務スーパーの粉であろうと他の粉であろうと美味しいパンを作ることは容易です。

ぜひ見直してみてください!

この記事を書いた人
パン作り研究家
ナオキパン

当サイト及びYoutubeチャンネル「パン作りの教科書 / ナオキパンchannel」を運営。
パン作りのコツや製パン理論を科学的な観点からわかりやすく解説し、パン作り上達の楽しさを広めることに加え、正確な製パン情報の普及に努める。
ベーカリーや食パン専門店など数々のパン店立ち上げや現場責任者の経験有。
自律神経失調症によりパン業界を一時離脱した際に、自身の知識と経験が誰かの役に立つことを願い、2022年5月から本格的に情報発信活動を開始(現在は寛解しゆる~く復帰)。
パンシェルジュ一級。

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