皆さん、ホシノ天然酵母でパンを作ったことはありますか?
普通のイーストや自家製酵母で再現できない独特な美味しさがあるパン酵母素材ですが、美味しさの原理を知ることでより上手にパンを作るヒントになります。
この記事ではホシノ天然酵母で作ったパンの特徴や美味しくなる科学的理由に加え、オススメレシピと活用法について解説します。
読者・視聴者様の声
わかりやすいやり方と注意点のおかげで、種起こしで失敗しなくなりました!
以前作って大変な思いをしたけど、このレシピなら気軽に美味しく作れました
ホシノ天然酵母の特徴
この項目はこちらの動画でも同様の内容を学ぶことが出来ます。
どんなパンが作れるの?
ホシノ天然酵母で作ったパンは、普通のパンに比べて濃厚な旨味と自然な甘味が際立ちます。
そしてこんがり焼いたクラスト1からは、焦がし醤油を彷彿とさせるような和風な香ばしさが微かに感じられます。
クラムはしっとりモチモチとした食感で、日本酒や甘酒のようなアルコール的芳香もほんのり香ります。
※ホシノ天然酵母の使用量や製法によって特徴及びその強さは変化します。
ホシノ天然酵母ってどんな材料?
ホシノ天然酵母の原材料表示を見ると以下の4つが使われていることがわかります。
- 小麦
- 米
- 酵母
- 麹
この中で特に独特な風味と味わいに大きく貢献しているのが米と麹です。
麹がパン生地にもたらす絶大な効果とは?
麹菌は味噌や醤油、甘酒、日本酒といった日本人に馴染み深い発酵食品の製造に使われる菌です。
麹菌はアミラーゼやプロテアーゼといった酵素を豊富に持っています。
これらの酵素がでんぷんやたんぱく質を分解して糖やアミノ酸を生成することによって、食品の甘味や旨味が向上します。
パン作りではこのような作用のことを「熟成」と呼ぶことが多いのですが、ホシノ天然酵母を使ったパン作りは生地の強い熟成作用が期待できると言えます。
通常の熟成では得られない、ホシノならではの風味
フランスパンなどハード系の無糖生地は、酵母菌の発酵に用いる栄養源を熟成によって生成します。
この時の熟成は小麦粉に元々含まれている酵素や添加したモルト2に含まれている酵素の力で進みます。
同じ作用ではありますが、こうした小麦やモルトの酵素による熟成と麹菌による熟成では得られる風味が異なるようです。
あるいは、小麦を栄養源として発酵させるのか米を栄養源として発酵させるのか、その違いによっても異なる風味となるのかもしれません。
は日本酒とビールについて考えてもらうとわかりやすいでしょう。
日本酒は麹の力で米のでんぷんを麦芽糖に変えて酵母菌に発酵させます。
ビールは大麦に元々含まれている酵素で大麦のでんぷんを麦芽糖に変えて酵母菌に発酵させます。
どちらも最終的には麦芽糖を酵母菌に与えることになりますが、実際のアルコール風味は全く別物ですよね。
使われている酵母菌の種類が異なることも発酵風味の個性に繋がっているはずですが、それだけでなく原料の違いも当然要因として考えられます。
ホシノ天然酵母は種起こしの過程で日本酒や甘酒の製造工程と似たような流れを踏むため、似たような風味が生まれるのではないでしょうか?
ホシノ天然酵母の使い方とコツ
ホシノ天然酵母って種起こしとか
発酵時間とか色々大変そう…
僕も以前はそんなイメージから使うことを敬遠していましたが、使い始めてみたら意外と簡単で手間もそんなにかからないことに驚きました!
ここではホシノ天然酵母の種起こしのやり方とコツから、効率的にパンを作るアイディアをご紹介します。
種起こしのやり方
- 本製品の2倍量の水(基本30℃に調温)を用意する。
- 水に本製品を振り入れる。
- ホイッパーで空気を含ませるようにしっかりかき混ぜる。
※数分で粉末が水を吸ってペースト状になります。 - 室温(27℃目安)で24時間寝かせる。
※でんぷん分解が進みペーストの質感が少し緩くなります。分離していてもOK。 - プツプツと音が聞こえるくらい元気に発酵していれば完成。
※出来れば冷蔵庫で一晩寝かせてから使う。最悪、すぐ使ってもOK。
種起こしは”温度”が重要!
ホシノ天然酵母はメーカーの工場で厳正な管理のもと作られている製品なので、自家製酵母と違って発酵力は安定しています。
ですが、種起こしの際に温度管理が甘いと生地を仕込んだ際に発酵力にブレが生じてしまうので、水の温度を正確に計りましょう!
説明書には30℃の水と書いてありますが、例えばお部屋が寒いとかき混ぜている間にすぐ温度が下がってしまいます。
それを見越して少々高めの温度にしておくなどして、最終的な温度が27~30℃になるよう工夫が必要です。
冬は室温が低いけど、寝かせる時間は?
温度が低いと発酵不足になるので
もう一日寝かせる必要があるかもしれません。
時間がかかる一次発酵は”オーバーナイト”がオススメ
ホシノ天然酵母で作る生地は、一次発酵にとても長い時間(6時間前後)を要します。
ストレート法で作ろうとすると、朝に仕込んで夕方に焼き上げといった形になるため丸一日がつぶれてしまいます。
「一日ゆったり過ごしたい」
なんて時には良いでしょうけど、もう少し手軽に楽しみたいときもありますよね。
そんな時は一次発酵をオーバーナイトにするのがオススメです。
イーストと違って発酵力が弱いので事前に3時間ほど常温での仮発酵は必要ですが、その後の冷蔵発酵でじっくりと生地の熟成発酵が進みます。
仮発酵をしっかり行えば冷蔵庫内でもしっかり膨らみます。
これによって作業を前日と当日に分散することができてスケジュールに余裕が生まれますし、生地の水和が進んでパンがしっとりモチモチになります。
オーバーナイトで作るホシノ天然酵母レシピはこちらの項目で紹介していますので、生種の配合量や一次発酵の時間などの参考にしてください。
※オーバーナイト法のコツについてはこちらの記事をご覧ください。
ご家で使うなら小分けパックがオススメ!
「生種を仕込んだら1週間以内で使い切る」
パッケージ記載の説明書にはこのような記載があります。
ですが風味や発酵力の微妙な変化を許容するなら、1か月経過したものでもしっかりパンが作れます。
使用期限の実際や幅広い活用方法の提案をご紹介したコチラの動画をご覧いただくと、生種の消費もよりスムーズになるかと思います。
とはいえ、通常の500gパックだとお家で消費しきれないことも多いと思います。
なのでこちらの便利な小分けパックがオススメです!
ホシノ系酵母の色々な種類、どう選べば良い?
検索すると、丹沢酵母とかフランスパン種とか色々あるけど…
どれを使えば良いの?
基本的には普通の「ホシノ天然酵母パン種」を選べば間違いないです。
この種だけでハード系からソフト系まで全てカバーできます。
「ホシノ丹沢酵母」に関しては、メーカーからの紹介文には「発酵力が強い」と書かれていますが、実際作り比べてみるとそこまで大差ありません。
むしろ、僕が実験したときは通常のホシノ酵母の方が発酵力が強かったです。
微妙な誤差で前後する程度のレベルだと思うので、迷うくらいならとりあえず通常タイプを買っておけばOKです。
「ホシノ天然酵母フランスパン種」についても、これでなければフランスパンを作ってはいけないというわけではありませんから、とりあえず色々なパンに挑戦してみたいなら通常タイプを購入しましょう。
それでまずは作ってみて、焼き色や味をもう少し改善してみたいと思ったらフランスパン種に変更すれば良いでしょう。
ホシノ天然酵母のオススメレシピ
ホシノ天然酵母で作る「基本のまるパン」
初めてホシノ天然酵母を使ってみる方は、ぜひトライアルとして基本的なこちらのレシピで挑戦してみてください。
材料 | 重量(g) | BP(%) |
強力粉 | 200 | 100 |
きび砂糖 | 16 | 8 |
食塩 | 3.2 | 1.6 |
ホシノ生種 | 30 | 15 |
水 | 104 | 52 |
バター | 16 | 8 |
※きび砂糖は上白糖・グラニュー糖で代用可能
※強力粉はたんぱく量12%前後の外国産使用
捏ね上げ温度 | 27℃ |
一次発酵 | 27℃ 180P |
冷蔵発酵 | 一晩(目安15時間) |
レンジ復温 | 500W 10秒+10秒 |
分割丸め | 60g |
ベンチタイム | 35分 |
成型 | 丸め |
最終発酵 | 38℃ 40分 |
焼成 | 210℃ 14分 |
ホシノ天然酵母の山食パン
食パンタイプで挑戦したい方にはこちらのレシピがオススメです。
材料 | 重量(g) | BP(%) |
強力粉 | 260 | 100 |
きび砂糖 | 10 | 4 |
食塩 | 4.6 | 1.8 |
ホシノ生種 | 39 | 15 |
水 | 143 | 55 |
バター | 10 | 4 |
※きび砂糖は上白糖・グラニュー糖で代用可能
※強力粉はたんぱく量12%前後の外国産使用
捏ね上げ温度 | 27℃ |
一次発酵 | 27℃ 180P |
冷蔵発酵 | 一晩(目安15時間) |
レンジ復温 | 500W 10秒+10秒 |
分割丸め | 230g |
ベンチタイム | 40分 |
成型 | 丸め |
最終発酵 | 38℃ 80分 |
焼成 | 220℃ 24分 |
8枚切りの表面に格子状の生地込みを入れ、こんがり焼き目が付くまでトーストした後にバターを塗ってはちみつを垂らす「ハニーバタートースト」として食べてみてください。
旨味と甘味と香りの相性がバツグンで、ビックリするくらい美味しいです。
安い強力粉でも絶品!捏ねない強力粉100%バゲット
麹菌による濃厚な熟成を活かしたハード系レシピも絶品です。
スーパーなどで買える一番安い粉を使っていても、旨味あふれる本格的な味わいになります!
材料 | 重量(g) | BP(%) |
強力粉 | 150 | 100 |
食塩 | 3 | 2 |
ホシノ生種 | 18 | 12 |
水 | 102 | 68 |
※きび砂糖は上白糖・グラニュー糖で代用可能
※強力粉はたんぱく量12%前後の外国産使用
捏ね上げ温度 | 27℃ |
一次発酵 | 27℃ 150P60 |
冷蔵発酵 | 一晩(目安15時間) |
レンジ復温 | 500W 10秒+10秒+10秒 |
分割丸め | 三つ折り→半分折り |
ベンチタイム | 30分 |
成型 | バゲット成型 |
最終発酵 | 38℃ 35分 |
焼成 | 240℃ 22分 |
通常のイーストで作るバゲットに比べて、香りも旨味も明らかな違いが感じられます。
コクが出て小麦の味が強調されるため、何もつけなくても美味しく食べられます。もちろん、バターやマーガリンを塗ればもっと美味しいです。
ホシノ天然酵母の新たな可能性!パン以外の使い道を考察
近年、自家製酵母パンの製法として増えているのが「自家製酵母種とイーストの併用」です。
イーストだけでパンは作れるのに
なんでわざわざ自家製酵母を併用するの?
それは、自家製酵母種そのものに独特な香り成分やうま味成分が含まれているからです。
例えばレーズン酵母の酵母液をストレートで使う場合であれば、レーズンの風味はもちろんワインやシェリー酒のようなアルコール風味が酵母液にたっぷり含まれています。
ストレートで使わず元種として使うにしても、元種を発酵させる過程で粉の熟成が進むため、完成した元種には複雑な発酵風味だけでなく旨味成分も豊富に含まれています。
なので、酵母種の力で生地を膨らませなくても、入れるだけでそれなりの効果は得られるということです。
そしてこれはホシノ天然酵母でも同様のことが言えるでしょう。
種起こしをした時点で、原材料である米や小麦が麹の酵素によって分解され、酵母菌の発酵も進んでいます。
香りをかぐと日本酒や甘酒のような爽やかなアルコール臭が感じられます。
ということは、本来発酵させずに作る焼き菓子などに「調味料」として入れるだけでも、個性的な焼き菓子が作れるのではないか?と考えています。
ホシノ天然酵母は発酵力がそれなりに強いのでわざわざイーストを使う必要もないとは思いますが、超リッチなパンなどイーストならではの強い膨らみが必要な場合もあるでしょう。
実際、イースト特有の爆発的な膨らみはホシノ天然酵母や自家製酵母では再現できません。
そういったモノに調味料として加えてみると、新たな発見があるかもしれません。
まとめ
ここで学んだポイントをおさらいしましょう!
- ホシノ天然酵母を使うと和風な香ばしさと濃厚な旨味のあるパンが作れる
- 同じ酵素分解でもその由来や分解する食材によって風味が全然変わってくる
- 種起こしの温度管理が重要
- オーバーナイト法を採用すればホシノ天然酵母でも効率的にパンが作れる
日本の発酵技術が詰まったホシノ天然酵母は、日本が誇れる優秀な酵母種です。
世界に誇れる日本人のパン「ジャぱん」を生み出すポテンシャルも秘めていると思います(懐)。
ご紹介したレシピを参考にしながら、ぜひ理想のホシノパンを作ってみてください!