発酵で生地があまり膨らまない…
イーストを増やしてみようかな?
ちょっと待った!
パン生地が発酵でうまく膨らまなくなる原因は多岐にわたります。
いま目の前にある生地がなぜうまく膨らまないのか?
その原因を正しく見極める知識が無いと、間違った対策をしてしまい余計に失敗を重ねてしまいかねません。
この記事では、パン生地が発酵でうまく膨らまない原因とその対策について解説します。
読者・視聴者様の声
今までやってた対策が間違いだったことに気付きました!
思い当たる点を改善してみたら、毎回良いパンが作れるようになった!
計量ミス・入れ忘れ
- イースト
- 塩
- 砂糖
特にこれらの計量ミスが発酵速度に大きな影響を与えます。(影響度の高い順)
それぞれ留意すべき点が異なるので詳しく見ていきましょう!
イースト
イーストを入れ忘れれば発酵は当然進みませんし、計量ミスでイーストが少なければ膨らみは遅くなります。
また、イーストは微量の誤差でも大きな影響があるため、小さじでの体積計量ではなく0.1g単位のデジタルスケールでの計量がオススメです。
稀にイーストが明らかに少な過ぎるレシピがあったりするので、レシピの問題点がないか確認することも大事です。
レシピに問題があるかどうかなんて、自分じゃわからないよ
信頼性の高いレシピと配合の割合を比べてみましょう!
塩
塩はイーストと同様に微量の誤差が発酵力に大きな影響を与えます。
どれぐらい影響が大きいかというと、塩0.5gの誤差は砂糖6gに匹敵する影響があります。
塩には発酵抑制効果があるため、多く入れ過ぎると発酵力が衰え膨らみにくくなります。
以上の理由から、0.1g単位のデジタルスケールで正確に計ることをオススメします。
0.1g単位の計量を導入してから、急に美味しいパンが作れるようになりました!
砂糖
砂糖は酵母菌のエサとしての役割があります。
元から砂糖を入れるレシピで砂糖を入れ忘れると、発酵の後半でエサ不足となり膨らみが持続しません。
逆に多過ぎると塩と同様に発酵を抑制する作用があるため、計量ミスで多く入れ過ぎる事で発酵が遅くなる可能性もあるでしょう。
塩やイーストほど微量の誤差による影響は大きくありませんが、計量ミスや入れ忘れの可能性の一つとして確認しておきましょう。
イーストの発酵力が弱い
稀に、あらゆる理由によってイーストの発酵力が弱い場合があります。
そのパターンについてそれぞれ見ていきましょう。
イーストが古い
使っている酵母は新鮮ですか?
開封後かなりの月日が経過したイーストや、保存方法・保存環境が悪い場合、イーストの活性が低下して生地の発酵力も弱まってしまいます。
適切な保存方法を心掛け、どうしても古くなったイーストを使いたい場合、イースト量を少しだけ増やしたり発酵時間を延長するなど、調整を視野に入れて使いましょう
イーストの種類が違う
海外製インスタントドライイーストと国産インスタント(とかち野酵母インスタントなど)では発酵力が違います。
また、白神こだま酵母ドライはそもそもインスタントタイプではないため、これも発酵力が違います。
異なる発酵力のイーストを使うことでレシピ通りの時間では足りなくなる、そんなパターンをよく見かけます。
また、意外と知られていないのが赤サフよりま金サフのほうが発酵速度は遅いということ。
「砂糖に強い=発酵力も強い」じゃないの⁉
「耐糖性イースト」という言葉から「糖分に強い」という解釈をされている人がほとんどですが、実は誤解です。
むしろ、若干発酵力が弱いことが耐糖性の要とも言えます。
「どういうこと?」「もっと詳しく!」と気になった方はコチラの記事をぜひご覧ください。
水不足・粉多すぎ
ミキシングの最中に、生地がベタつくからといって粉を加えてしまっていませんか?
あるいは、ベタつくのが嫌だからといって水を最初から減らして作っていませんか?
そういった行為によって粉と水の割合が変わってしまうと、レシピの意図より硬い生地が出来てしまいます。
水分割合が不足した生地は、主に二つの理由で膨らみが悪くなります。
- 酵母菌の活性が落ちる
- 生地の伸びが悪くなる
酵母菌の発酵は細胞内の酵素の力を使います。酵素は水分がある環境でのみ働けます。
そのため水分の多い生地のほうが酵母菌はより活発に活動します。
更に水が不足した生地は硬く伸びにくいです。
パン生地が膨らむ現象というのは、酵母菌が「生地という名の風船」を内側から膨らませることで起こる現象と言えます。
そこで皆さん、風船を膨らませた時のことを思い出してください。
新品の風船はそのままだと硬くて膨らませるのが大変ですが、手でよく伸ばしほぐせば柔らかくなって膨らませやすいですよね?
パン生地も同じで、硬くて伸びにくい生地は膨らませるのが大変なのです。
大変なのはわかったけど、時間長く待ってあげればいいんじゃないの?
こういったケースでは、生地内部では見た目の膨らみ以上に発酵が進んでしまっている場合があります。
それによってレシピが想定している味より甘味が薄まってしまったりと、決して同じ焼き上がりにはならないのです。
そうはいっても、ベタベタな生地は捏ねられないよ…
正しい捏ね方を身に付ければベタベタ生地も簡単に捏ねられるよ!
あるいは、使っている道具が良くないのかもしれません。
手ごねの時、シリコンマットを使ってはいませんか?
僕も昔は使ったことありますが、あれはオススメできません。生地がマットを持ちあげちゃうので捏ね作業には不向きです。
オススメは程よい重量感のある大理石の捏ね台「まーぶるめん台」です。
僕が手ごねでパン屋レベルのパンが作れるのも8割はまーぶるめん台のおかげです(残りの2割は自分の知識と技術)。
まーぶるめん台や他のこね台についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ガス保持力が不足している
生地の中で発酵は進んでいるけれど、生地のガス保持力が弱いためにガス漏れして、実際のガス発生量ほど生地が膨らんでいないケースがあります。
この場合、実際の発酵具合ほど見た目が大きくありません。
小さい穴が無数に開いている風船を膨らませているのと同じ状況です。
生地のガス保持力に影響を与える要因は様々です。
- 粉のグルテン量が少ない
- こね具合が足りない
- 豆乳やココナッツミルクなどを使用している
- ココアや抹茶など小麦粉以外の粉物を使用している
- 発酵・熟成オーバーで生地の過軟化
- 水の硬度が低すぎる、または高すぎる
- 生地のpHが低すぎる、または高すぎる
生地のガス保持力についてより詳しくはこちらの記事をご覧ください。
生地の温度が低くなりすぎた
発酵速度はその時の生地の温度次第で変わります。
そのためレシピごとに様々な捏ね上げ温度が設定されており、その通りに捏ね上げることが出来なければ発酵速度が変わってしまい、レシピの時間通りに工程を進めても良い発酵具合は得られません。
加えて、たとえ捏ね上げ温度をレシピの指示通りに出来たとしても、その後の工程で生地が冷えてしまっても発酵速度は遅くなります。
生地は小さければ小さいほど、あっという間に室温の影響を受けます。
なので分割丸め後の生地は特に注意が必要です。
マグカップのお湯とお風呂のお湯、どちらが早く冷めますか?それと同じです
冬にお家でパンを作る場合、室温を25℃以上に調整するのが理想ですが、それが難しいなら生地が冷えてしまうことを見越してベンチタイムでも暖かい発酵室(オーブン発酵機能など)を利用して生地を温めるなど、プラマイゼロにするイメージで工夫すると良いでしょう。
冬はベンチタイムでも30℃か、35℃設定を使うこともあります。
もちろんお風呂で発酵させるも良し、コタツで発酵させるも良し。とにかく工夫次第です。
イースト2倍の対処法がなぜダメなのか?
イーストはパン生地を膨らませる材料とも言えますから、「前回うまく膨らまなかったから、今回は2倍にしてみよう!」と思ってしまうのも無理はありません。
ですが、もし前回の失敗原因がイースト量ではなく室温の低さだった場合、次に作った時の室温が正常だと、イースト2倍だと発酵が進みすぎてしまいます。
イーストの量は1.0%を1.2%に増やしただけでも発酵時間が30分は短縮されます(インスタントの場合)。
たったの0.2%の差で30分も変わるのですから、二倍になんてしたらとんでもないことになりますよね!
過発酵になってしまった生地は味・焼き色など様々な欠点が生じます。
最悪、アルコール臭さを感じる生地になることも…
仮に運よく上手に作れたとしても、イースト臭の目立つパンになってしまい不快に思われる方も多いでしょう。
このように、安易なイースト増量は百害あって一利なしです。
生地が膨らむメカニズムを理解して失敗を防ごう!
パン作りの三大要素って聞いたことありますか?
温度
時間
重量
このうち「温度」が生地の発酵に大きく影響することはなんとなくわかっている方も多いでしょう。
では、その温度って何の温度のことを指すと思いますか?
- 粉の温度?
- 仕込み水の温度?
- お部屋の温度?
- 発酵器の温度?
どれも違います。正解は「生地温度」です。
もっと詳しく言うと、「今、目の前の生地は何℃なのか?」という温度です。
パン作りにおいてはあらゆる解説で「生地が発酵する」といった表現がされますが、これはわかりやすく説明しているだけで、実際に発酵をしているのはイースト菌で、生地はイースト菌に「膨らまされている」のです。
イースト菌の発酵速度は環境の温度に左右されます。
イースト菌にとっての環境とはどこか?
イースト菌が生息しているのは生地の中なので、この場合の環境温度というのは生地温度です。
室温が32℃であっても生地温度が25℃ならイーストにとっては25℃の世界ですので、25℃の発酵速度でしか活動しません。
(その後、徐々に生地が温められることでイーストの発酵も32℃の早さになります。ただし生地表面から徐々に温められるため、表面付近と中心部では発酵具合に差が生じます)
逆に生地を冷蔵庫に入れたとしても、入れた直後でまだ生地温度が27℃ならイーストにとってはまだ27℃の世界ですので、しばらく活発に発酵します。
上記4つの箇条書きはあくまで生地温度をコントロールするための一手段でしかありません。
「いま、目の前にある生地の温度は何℃なのか」その概念を常に持っておくことが上手なパン作りに必要不可欠です。
まとめクイズ
A.「×」。
金サフはインベルターゼ活性が低いため、ショ糖分解が遅いです。それ故に発酵の立ち上がりもやや遅くなります。
A.柔らかい生地。
風船で例えればどちらが容易に膨らむかわかるはずです。
A.冷蔵庫から出したての冷たいあんこを包んだことで、生地が冷やされてしまった。
フィリングを常温に戻すと緩くなって包みにくい場合もあるのでそうする必要はありませんが、フィリング無し成形のアイテムとは発酵時間が変わることを想定して天板を別々にするなどの配慮をしましょう。