スーパーでは日清「カメリヤ」をはじめ、様々な強力粉が入手できます。
皆さんが見かけることの多い強力粉と言えば、「カメリヤ」「カメリヤスペシャル」「イーグル」この三種あたりでしょうか?
値段が違うけど、どんな違いがあるの?
今回はスーパーで買える定番の強力粉4種類でパンを作り比べて、それぞれどんな違いがあるのか解説します。
使用した4種類の強力粉、それぞれの特徴
今回比較する強力粉は以下の4種類。
- カメリヤ
- カメリヤ・スペシャル
- イーグル
- 業務スーパーの強力粉
それぞれどんな違いがあるのか、まずは粉の特徴から見ていきましょう!
日清製粉ウェルナ「カメリヤ」
カメリヤが置かれていないスーパーを探す方が難しいと言っても過言ではないほど、定番中の定番の強力粉でしょう。
- たんぱく量:12.6%
- 原料産地:アメリカ、カナダ
強力粉の代名詞とも言えるため、レシピで使う粉の指定が「強力粉」としか明言されていないならとりあえずカメリヤを使っておけば問題ない、そう言っても良いでしょう。
逆にこれ使って支障が出るような配合なら、ちゃんと銘柄を明言すべきだと思います。
粉の特徴としては北米産・カナダ産の粉らしいクセのない淡白な風味で、あらゆるジャンルにも無難に対応出来そうな印象です。
日清製粉ウェルナ「カメリヤ・スペシャル」
小麦粉の品ぞろえが豊富なスーパーなら、カメリヤの隣に陳列されていることの多いカメリヤスペシャル。
日清製粉ウェルナから販売されるカメリヤの上位互換と言える強力粉です。
- たんぱく量:12.0%
- 原料産地:アメリカ、カナダ
粉を触ってみるとカメリヤより粒度が細かく、ふわふわとした肌ざわりを感じます。
そして微々たる差ではありますが、カメリヤと比べて穀物臭が少なくよりクセの無い上品な風味のように感じます。
ふんわり食感と口溶けの良さがカメリヤより勝るとメーカー側は謳っていますが、たんぱく量はカメリヤより0.6%少ない数値となっています。
たんぱく量が少ないってことは膨らみで劣るんじゃないの?
必ずしもそうとは限りません!以下で詳しく解説しましょう。
等級の違い
「たんぱく量=グルテン量」と思っている方も多いでしょう。
しかし、小麦粉に含まれているたんぱく質は何もグルテン(の元となるグルテニンとグリアジン)だけではありません。
成分表示に記されているたんぱく量の数値は、グルテン以外のたんぱく質も含めた数値なのです。
そして結論から先に言うと、カメリヤスペシャルはカメリヤの上位等級の強力粉と言えます。
なんでそう言い切れるの?ていうか等級って何!?
等級とは小麦粒の中心部分からどのくらい外側付近まで使用した粉であるか、その度合いによって分けられるもの。
中心部分のみ使用したものが特等粉、そこから少し外側を含むにつれて一等粉・二等粉と続いて分けられています。
製パンで主に使われるのは特等粉~二等粉です。
値段も特等粉が最も高く、等級が下がるにつれて低くなります。
成分的な特徴については、外側に近づくほど灰分(ミネラル)とたんぱく質が多くなり、香りも穀物臭がより強くなっていきます。
製粉会社では、特に北米産やカナダ産の強力粉を2種類以上は製造している場合が多く、片方の値段の低い方は高い方と比べてたんぱく量・灰分共にやや高い数値となっています。
今回比較したカメリヤとカメリヤスペシャルには灰分の表記は無いものの、香りの微妙な違いからカメリヤの方が灰分がやや高いのは想像でき、たんぱく量は表記されているのでカメリヤの方が多いことがわかります。そして値段もカメリヤの方が安い。
こういった状況から、カメリヤスペシャルがカメリヤの上位等級であることが考えらるのです。
恐らく、カメリヤは二等粉でカメスペは一等粉あたりじゃないかな?
ニップン「イーグル」
カメリヤが売られていないスーパーではこちらを見かけることが多いのではないでしょうか?
こちらもパン作りの定番として使われる強力粉です。
- たんぱく量:12.0%
- 原料産地:アメリカ、カナダ
このパッケージの成分表にはたんぱく量12%としか書かれていませんが、富澤商店で販売されているイーグルには12.0%と詳細に記されていました。
富澤商店のイーグルもニップンで製造されている粉なので、恐らくこちらも12.0%だと考えて良いでしょう。
※ただしロットの違いなどで成分の誤差が生じるため、比較しても同じパンが出来ない可能性があります。
業務スーパーの強力粉
こちらは業務スーパーで販売されている強力粉ですが、製造元には「ニップン」と書かれています。
そして成分表や産地もイーグルと全く同じです。
- たんぱく量:12%
- 原料産地:アメリカ、カナダ
同じ製粉会社から出ている同じ産地の小麦粉で、等級違いならどちらか片方のたんぱく量と灰分が微妙に多くなるのが定石ですが、表示からはそのような雰囲気が読み取れません。
開封して粉の香りや触り心地を確かめてみても、イーグルとの違いが全くわかりません。
もしかしたら、内容物は全く同じなのかもしれません。
※仮に同じ製造ラインで作られているものだとしても、作り比べた際にロットが異なるパッケージ同士だった場合にはパンに違いが現れる可能性もあります。
生地感の違い
ミキシングはPanasonicのホームベーカリー「Bistro」で、同じ捏ね時間で行いました。
どれも指紋が透けて見える薄い滑らかな膜が出来る、良い生地になりました。
写真では分かりづらいですが、触った感触で唯一違いを感じ取れたのはカメリヤスペシャル。
他の生地より少し柔らかくて伸びやすい感じがしました。
他の3種はあまりハッキリとした違いは感じられませんでした。どれも普通に良い生地です。
焼き上がりの比較
焼き色・大きさ共にどれも目立った差はありません。
唯一、カメリヤスペシャルだけ他より若干大きく膨らんだように見えます。
カメリヤもイーグル・業スーより大きく見えるかもしれませんが、よく見ると底部のラインがやや上に来ているので実際の差はもっと少ない(もしくは無い)はずです。
カメリヤスペシャルが他より大きく膨らんだ要因として考えられるのは、生地の伸展性です。
同じ配合で作った生地でも、他より柔らかく伸びやすい生地だったため、同じ発酵時間で最終発酵をとったところカメリヤスペシャルだけほんの少し高く膨らみました。
この差が焼成後の大きさにも表れていますし、そもそも他三種より窯伸びしやすい生地であったとも言えます。
柔らかくて伸びやすい生地は、内側からの膨らみにも柔軟に対応できます。
風船で例えるなら膨らませる前に手でよく伸ばして柔らかくした風船です。膨らませやすくなりますよね?
ただし、ただ柔らかいだけでは大きな膨らみは得られません。程よい丈夫さを併せ持っていないと膨らんだガスを保持できません。
カメリヤスペシャルは、伸びやすさと丈夫さを丁度いいバランスで併せ持った、製パン性の高い強力粉と言えるでしょう。
味と香りの違い
微々たる違いですが、カメリヤスペシャルはカメリヤよりも雑味が少なく上品な味わいです。
カメリヤの方がわずかに穀物臭が目立つ印象です。
灰分が多い粉ほど穀物臭が強い傾向にあるので、この違いにも納得です。
イーグルもカメリヤ同様にわずかな穀物臭が感じられましたが、カメリヤとはまた異なる香りのように感じました。
カメリヤは甘い感じの香り、イーグルはより穀物らしいワイルドな香り、そのような印象でした。
しかしこれらは非常に微々たる差でしかありません。
恐らく何も意識せず食卓に出されても、それを何の粉で作られたパンであるかを言い当てることが出来る人はいないでしょう。
イーグルと業スー強力粉の間には、体感できる風味の差はありませんでした。
以前、これらの粉を比較したときは若干の違いがあるようにも感じられましたが、同じ内容物でもロットが違うことで差が出ていた可能性もあります。
少なくとも、「業務スーパーの強力粉でパンを作ったら膨らまない」なんてことは無く、イーグルと遜色なく同じクオリティのパンが作れることには変わり有りません。
まとめクイズ
A.「特等粉」
等級の中では最も色味が白く灰分が少ない粉なので、雑味の少ないパンが作れます。
A.×
外側に近いほど(つまり等級が低いほど)たんぱく量は多くなります。
しかしグルテニンとグリアジン以外の、グルテン形成と関わりのないたんぱく質の割合が多く酵素も多いため、必ずしもたんぱく量の数値が高いからといって製パン性が良いとは限らない。