フランスパンを捏ねすぎるとどうなる?味や見た目の違いを徹底検証

フランスパン(バゲットなど)の生地は捏ねすぎるとダメ

とか

ハード系の生地は捏ねない方が美味しく作れる

など…こういった情報を耳にしたことはあっても、実際にフランスパン生地を他のパンのようにしっかり捏ねて作るとどうなってしまうと思いますか?

「食パンみたいになるんじゃないの?」いやいや、フランスパン生地が食パンみたいにふわふわソフトになることはありません。

今回はフランスパン(バゲット)捏ねすぎ問題について、具体的に何がどう変わるのか?実際に作り比べてその違いを科学的に解説していきます。


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フランスパン生地はこね具合が早く進む?

今回の検証では、まず2本分の生地をまとめて仕込みます。

最初は粉・イースト・モルト・水で混ぜて20分のオートリーズ(熟成休ませ)を設け、塩を加えて2分捏ねます。

その後二つに分けて、片方はそこで捏ねるのをやめて一次発酵へ、もう片方は5分ほど追加で捏ねます

「たったの5分?そんなので違い出るの?」と思うかもしれませんが、フランスパン生地では大きな違いです。

そもそもフランスパン生地のように副材料(砂糖や油脂など)が入らないものは、入る生地(食パンや菓子パンなど)に比べてこね具合の進みが段違いなのです。

砂糖や油脂などの製パンにおけるデメリットの一つに、ミキシングでのグルテン結合の阻害が挙げられます。

というか、主材料(粉・塩・水・酵母)以外のものは全てグルテン結合を阻害すると言っていいかもしれません。

なので、主材料だけで作られるフランスパン生地はほんの少しのミキシングオーバーでモノが変わってしまうと言えます。

実際に5分追加で捏ねただけで、生地を薄く伸ばしてみると指紋が透けてみえる薄い膜が出来ました。食パン並みのこね具合です。

「捏ねるとクープが開かない」はウソ!?

フランスパン(バゲット)は捏ねすぎるとクープが開かないから、捏ねないで作る

そう思っている方も結構多いと思います。

ですが、今回の検証ではむしろ逆の結果が現れました。

なんと、捏ねすぎた生地の方がクープが勢いよく開いているのです!

驚きの結果ですね。

ですが、開けばいいってもんじゃなくて、開きすぎて形が暴れてしまっています。

これは、しっかり捏ねてしまったことで本来フランスパン生地に求める程度以上のコシがついてしまったことが原因です。

今回は比較検証のため、工程時間や生地の扱い方などは微調整せずなるべく全く同じ扱いをしました。あくまで程よいこね具合が前提の扱い方。

コシがそこまで強すぎない生地の表面に「クープが開くことのできる抗張力」をしっかり与えるための成型をしました。

なので、同じ成型をコシの強すぎる生地にやってしまうと、その抗張力も当然余計に強くなってしまいます。

余計に強くなった生地のコシや抗張力を十分に緩めるためには、最終発酵を延長しなければなりません。ですが比較検証のため今回は延長していません。

それが今回の結果に繋がったと言えるでしょう。

ここまでの解説だけだと、「じゃあクープ開くの優先で考えたら、捏ねすぎってくらいまでしっかり捏ねて、その代わり最終発酵を延長した方が安全じゃない?」と思ってしまう方もいるかもしれませんが…

フランスパン生地捏ねすぎによるデメリットはもう一つあります。

捏ねすぎで風味が変わる!?

焼きあがったフランスパン(バゲット)を真横にスライスして断面を覗いてみると…

程よいこね具合のフランスパンと捏ねすぎたフランスパンでは色味が微妙に異なることがわかります。

(ぜひ動画を確認してください)

前者はちょっと黄色味がかったクリームホワイト、後者はより白味が強い。

パン生地はこね具合が進めば進むほどグルテンの酸化が進み内相色が白っぽくなります。

そして、グルテンは酸化が進むほど丈夫な骨格になりますが、代わりに粉の風味は薄れます

内相色は風味がちゃんと残っているかどうかを見極める一つの目安にもなるということです。

食パンの場合は砂糖や脱脂粉乳などの副材料で風味をカバーできるため、しっかり捏ねてかなり白い内相色になっても美味しさを確保できます。

でも、フランスパンは主材料しか使っていないので、粉の風味は極力残しておかないと物足りない香りのパンになってしまう。

その上、食パンよりも時間かけてゆっくり発酵させて作るため、短時間製法で作れる食パンなどに比べたら素材の風味は逃げやすいです。

だからこそ、フランスパン生地は捏ねすぎると良くないと言われるわけです。

捏ねないフランスパンは高難易度?基本は捏ねる!

以上の理由から、美味しいフランスパンを作るためにはいかにこね具合を最小限に抑えながらもちゃんと窯伸びする生地を作れるかがポイントとなってきます。

確かにその考え方でいくと、フランスパンは捏ねない方が良い、というのは正解になります。

ですが、捏ねない製法だとパンチ回数やタイミング、成型などあらゆる工程をうまく調整しないと、クープが開かず窯伸びもしない結果になりがちです。

ちゃんと窯伸びしないと内相が詰まり気味になります、それだと火通りが悪くなるため結果的に口溶けの悪化など味わいに悪影響が出ます。こうなると本末転倒で、むしろ風味は落ちても捏ねすぎてしっかり膨らんだフランスパンの方がまだ印象が良いです。

慣れないうちは基本的なフランスパンのレシピを使って、基本に忠実にある程度捏ねて作るのが美味しいフランスパンへの近道になります。

クープが開く原理や窯伸びの原理など、あらゆる製パンの理屈を頭で理解できるようになってからの方が、捏ねないフランスパン作りの成功率は上がります。

もしフランスパン作りで上手く行かず悩んでいるなら、一旦基本に戻ることも検討してみてはいかがでしょうか?

この記事を書いた人
パン作り研究家
ナオキパン

当サイト及びYoutubeチャンネル「パン作りの教科書 / ナオキパンchannel」を運営。
パン作りのコツや製パン理論を科学的な観点からわかりやすく解説し、パン作り上達の楽しさを広めることに加え、正確な製パン情報の普及に努める。
ベーカリーや食パン専門店など数々のパン店立ち上げや現場責任者の経験有。
自律神経失調症によりパン業界を一時離脱した際に、自身の知識と経験が誰かの役に立つことを願い、2022年5月から本格的に情報発信活動を開始(現在は寛解しゆる~く復帰)。
パンシェルジュ一級。

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