40分も捏ねたのにグルテンチェックで薄い膜が出来ない…
ふわふわでよく膨らんだパンを作るには、グルテンチェックで指紋が透けて見えるほど薄い膜が出来るのが理想です。
しかし、この膜が出来ないからといって更に捏ね時間を増やそうとしていませんか?
その原因、捏ね時間ではない可能性が高いです!
この記事ではパン生地のグルテン膜が出来ない時に考えられる様々な原因について解説します。
捏ね不足(又は捏ね方が悪い)
当然ですがグルテン膜が出来ない原因として一番多いのは捏ね不足です。
やっぱりもっと長時間こねなきゃいけないんじゃん!
もしあなたが30分以上コネ続けているのに上手くいかないようなら、問題は捏ね時間よりも捏ね方です。
正しい捏ね方でないと例え何時間捏ね続けようと良い生地は出来ませんし、逆に良い生地から遠ざかってしまいます。
ミキシングでは生地に”○○”を混入させて”〇□”を促す
この○○と〇□に入る言葉がわからないなら、ミキシングの基本を正しく理解出来ていないということです。
まずはコチラの記事で正しいミキシングについての知識と手ごねのコツを学びましょう。
「捏ねすぎでグルテン膜ができない」は99%勘違い
オーバーミキシングでグルテン組織が破壊される、これ自体は起こりうる現象です。
しかし、グルテン量の多い強力粉生地においては、手ごねでオーバーミキシングまで捏ね進めるのは至難の業です。
少量の生地をプロレスラーが頑張って捏ねればようやくオーバーするかしないか、ぐらい大変です。
なので、グルテン膜が出来ない原因を「捏ねすぎによるものかな?」と考えてしまうと…
こね不足でグルテン膜が出来ない
↓
「捏ねすぎかな?」次は更に捏ね時間を減らす
↓
もっとこね不足でグルテン膜が出来ない
↓
Loop…
という負のループにハマってしまいます。
オーバーミキシングになる前の段階で必ず生地は驚くほどツヤツヤ滑らかな見た目になりますから、それに気付かず捏ねすぎになることは手ごねではあり得ません。
安心してしっかり捏ねて下さい。
捏ねは十分だけど膜の作り方が悪い
グルテンチェックのやり方が雑だと、実は捏ね具合は十分なのに膜が出来ない原因になり得ます。
どんなにいい生地であっても抗張力(戻ろうとする力)があるため、一気に無理やり伸ばそうとすれば生地は切れてしまいます。
ポイントは左右の手を上下互い違いに動かしてちょっとずつ伸ばすこと。
こちらの動画では4つのこね具合の段階でそれぞれグルテンチェックを行っていますので、併せてご覧いただくとよりわかりやすいかと思います。
グルテン結合を阻害する材料の使用
「○○○パウダー」を使っている
ココアパウダーや抹茶パウダーなど、小麦粉とは異なるパウダー類を生地に練り込んでいる場合、グルテン膜が出来ない(出来にくい)原因となります。
パウダー類がグルテン結合の邪魔者となることで捏ね不足になる、というのが一番多いパターンですが、捏ね具合が十分でも膜は破れやすくなります。
対処法としては、パウダー類の後入れや中種法の採用などが挙げられます。
前者であれば、パウダーと同量(※)の水を練り合わせてペーストを作っておき、捏ねの後半(生地の完成度8〜9割ほど)で加えます。
後者なら中種をプレーンで作っておけば、すでにグルテンがある程度強化された状態で本捏ねに入れます。さらに本捏ねでもパウダー後入れにすればより作りやすくなるでしょう。
(※)パウダーの種類によって最適な水分量は変わってくるので適宜調整してください。
豆乳やココナッツミルクを使っている
実は知ってる人が意外と少ないのですが、豆乳・ココナッツミルクで生地を仕込むと生地の繋がりが著しく悪くなります。
普段通りの捏ね方と捏ね時間でも、「生地が滑らかにならない」「ぶちぶち切れる」といった現象に見舞われます。
明確な科学的理由が記されている論文は見当たらないのですが、少なくとも豆乳とココナッツミルクの固形分が牛乳の固形分とは性質や形状が異なることが原因であるはずです。
実際、どのくらいの違いがあるの?
オーツミルクやアーモンドミルクでも生地は繋がりにくいの?
牛乳・豆乳・アーモンドミルク・オーツミルクで作り比べた動画をご覧ください。
生地が酸性に傾きすぎている
弱酸性が最もパン作りに適したpHですが、酸性に傾きすぎると今度は生地が壊れてしまいます。
生地が酸性に傾きすぎる原因はいくつかあります。
過発酵である
中種法などの発酵種法で、発酵種が過発酵すると強い酸性になってしまい、それを本捏ねで使うとグルテンがぶちぶちと切れてしまい一向に繋がりません。
無理やり最後まで焼き上げたとしても酸味が強く臭いもキツいため、とても食べられるものではありません。
酸性食品を材料に使っている
レモン汁や酢など強い酸性のものをほんの少しだけ配合することは、生地を弱酸性にすることが出来て様々なプラスの効果があります。
しかし多すぎると酸性に傾きすぎてしまうため注意が必要です。
ちなみに以前、赤いパンを作りたくてハイビスカスパウダーを生地に練り込んだら、生地が滑らかにならずしまいにはぶちぶちと切れて結局生地がオジャンになりました。
調べてみたら酸性食品でした。
意外と盲点になりやすい部分なので、珍しい素材を使ってパンを作る時は注意が必要です。
自家製酵母のpHが低すぎる
自家製酵母はpHのコントロールが重要で、種として完成した頃にはどんな種類のものであってもpHは酸性寄りになっています。
発酵が進みすぎて強い酸性になってしまうとパン作りには適さないので、種継ぎで定期的にpHを調整する必要があります。
ただし種継ぎを繰り返すことで生息している菌の割合も変わってしまい、理想のパンが焼けなくなるため定期的にリフレッシュ(1から作り直す)するお店も多いです。
自家製酵母種は詳細なレシピだと「pHいくつになったら使用可能」と書かれることもあるくらいです。
自家製酵母によるパン作りを失敗なく行いたいならpH測定器の購入も検討すべきです。
まとめ
ここで学んだポイントをおさらいしましょう!
- 捏ね時間が足りないよりも、捏ね方が悪い場合がほとんど
- 十分なこね具合でも膜の伸ばし方が雑だと膜は出来ない
- グルテン結合を阻害する材料に注意する
- 生地のpHが酸性に傾きすぎると生地はブチブチと切れてしまう
指紋が透けて見えるほど薄く滑らかなグルテン膜が出来る生地は、パン屋レベルのふわふわパンになれる素質を確実に持っています。
原因を一つ一つ検証して、思い当たる点があれば改善してみましょう!