パン作りでメープルシロップを使うには?砂糖やはちみつからの代用方法も

メープルシロップ

メープルシロップとパンの相性はバツグン!

それなら、パン作りでもメープルシロップを使ってみたくなりませんか?

この記事では、メープルシロップをパン作りで使う際の注意点や実際に得られる効果、砂糖やはちみつの代用として使う場合の置き換え方法などをご紹介します。

メープルシロップでパンを作る効果

色味と風味が変わる

パンの材料としてメープルシロップを練り込んで使うと、パンのクラム(中身)の色味がほんのり茶色っぽくなり、とても美味しそうな印象を受けます。

そして、風味も変わります。

残念ながらパンにメープルシロップを垂らして食べる時のような「ダイレクトなメープル風味」は味わえませんが、砂糖やはちみつで作るのとは明らかに違う、ほんのりと暖かい印象の香りになります。

なので、「メープルパン!」として謳うよりも、メープル風味が隠し味として発揮されるようなパンになると言えるでしょう。

具体的にどれくらい色味が変わるのか?についてはこちらの動画をご覧いただくとわかりやすいかもしれません。

発酵は遅くなる?

メープルシロップを使ったからといって生地の発酵が遅くなることはありません

仮に砂糖をメープルシロップに置き換えて使用する場合でも、糖分率をしっかり計算して使用量を調整すれば同等の発酵力が得られます。

稀に「メープルシロップを使うと発酵が遅くなる」と説明されていることがありますが、その理由として挙げられているのが「糖分率が砂糖より低いから」とのことです。

これはあくまで糖分率を計算しないで使ってしまっていることが原因であって、メープルシロップ自体が発酵を遅くする効果を持っているわけではありません

その上、そもそも糖分量が減ることで発酵が遅くなるとも限りません

使うイーストによって最も活発に発酵できる糖分率は変化しますし、菓子パン生地のように糖分量が多いレシピにおいては糖分が減った方が発酵力は向上します。

以上の事から、「メープルシロップを使うと発酵が遅くなる」は間違いであると言えます。

パンがしっとりする?

はちみつ

似たような材料であるはちみつにおいては「パンがしっとりする」と解説されることがよくあります。

これは、ショ糖よりも吸湿性が高い果糖・ブドウ糖が主成分であること、また含まれる水分が糖分と結合した状態「結合水」であることが理由として挙げられています。

ですが、実際にはパンの材料として使う分には食べ比べて違いがわかるほどの差はありません

さらに、メープルシロップの主成分は砂糖と同じショ糖であり、はちみつよりも「しっとり感」への寄与が少ないです。

はちみつでさえ違いがハッキリしないのですから、メープルシロップでも当然違いは感じられません。

「メープルシロップを使うとパンのしっとり感が増す」のではなく、既存のレシピにメープルシロップをただプラスするだけとか、砂糖をただ同じ分量で置き換えるだけといった、正しい換算をせずに使った場合に、そのような感想を抱くのでしょう。

ですがそれはメープルシロップにしっとり感を向上させる効果があるのではなく、単純に糖分や水分を増やしたことが原因です。

※ただしカステラなど糖分量がパンより圧倒的に多く生地にしてから焼き上げまでの時間もパンより圧倒的に短い場合は違いが出てくるかもしれません。その辺の検証も今後やってみたいと考えていますので、ブックマークして続報をお待ちください☆

オススメの使い方

メープルシロップは料理においてもとても幅広い用途が提案できるほど、相性のいい食材は山ほどあります。

なので、それこそパン生地に練り込んで使う分には「合わないものは無い」と言っても過言ではないのですが…

くるみ食パン

僕のオススメはクルミパンに使うことです。メープルの暖かな風味がクルミの同様に暖かな風味と相性が良いのです。ほかにもチョコやカカオニブを使うパンだったり、コーヒーパンを一味変えたりするのも良いでしょう。

組み合わせで大失敗になることはほとんど無いので、興味があれば色々試してみてください!

メープルシロップを使う際の注意点

“ただ加えるだけ”はNG

例えば「既存のレシピにメープルシロップを大さじ1だけ加えてみましょ♪」

コレ大NGです!

メープルシロップは糖分・水分の塊です。これらはどちらも生地感や発酵に大きく関わってきます。

ただ加えるだけだと増加した糖分や水分によってベタつきが増してしまい、非常に作りづらくなりますし、同じ形状で作れなくなる可能性もあります。

“ただ置き換えるだけ”もNG

例えば「砂糖15gをメープルシロップ15gに変えてみましょ♪」

コレもNGです!

メープルシロップは糖分率が約66.3%、水分率が約33%です。砂糖から同量で置き換えるだけだと糖分量も水分量も変わってしまいます。

これだと元のレシピより甘味が減り、かつベタつきが増してしまいます

正しい置き換え方は?

  1. まず糖分量が同じになるよう使用量を算出する
  2. 使用量に含まれる水分量を計算する
  3. その水分量の分だけ仕込み水から減らす

この手順でレシピを再計算する必要があります。

こうすることで、同じ糖分量・水分量の配合になるため、既存のレシピと同じように作ることが可能となります。

なんか難しそう?「糖分→水分」の順に計算する、ってだけ覚えておけばOK!

次に具体的な計算例をご紹介しますので、ぜひマスターして帰ってください。

砂糖の代用でメープルシロップを使う場合

砂糖
メープルシロップ

砂糖15g 仕込み水102g のレシピだと…

まず砂糖15gをメープルシロップに置き換えます。

メープルシロップの糖分率は66.3%なので、

15g ÷ 0.663 = 22.6g(使用量)

メープルシロップを22.6g使えば、15gの糖分が含まれることがわかりました。

次にこのメープルシロップに含まれる水分量を計算します。水分率が33%なので、

22.6g × 0.33 = 7.45g (水分量)

これで22.6gのメープルシロップには7.45gの水分が含まれていることがわかりました。

最後に、仕込み水の分量を調整します。

102g – 7.45g = 94.55g ≒ 94.5g (調整後仕込み水)

結果、砂糖15g 仕込み水102gのレシピで砂糖を置き換える場合は、メープルシロップ22.6g 仕込み水94.5g使えば良いということですね!

※家庭製パン向けに小数点第二位は切り捨てにしました。業務製パンでは切り上げ推奨です。なぜかって?気になる人がいたらコメントで教えてください。

はちみつの代用でメープルシロップを使う場合

はちみつ
メープルシロップ

はちみつ15g 仕込み水105g のレシピだと…

まずはちみつに含まれる糖分量と水分量を明らかにする必要があります。

はちみつはおおよそ糖分80%水分20%なので、

15g × 0.8 = 12g(糖分)

15g × 0.2 = 3g(水分)

となります。

つまり、このレシピは糖分12g 水分108g と書き換えることが可能です。

ここからようやくメープルシロップへの置き換えが可能です。

この先は砂糖からメープルシロップへの置き換えと同じ手順で進みます。

12g ÷ 0.663 = 18.01g ≒18g(メープル使用量)

18g × 0.33 = 5.94(メープル水分量)

水分108g – メープル水分量5.94 = 102.06 ≒ 102g(調整後仕込み水)

結果、はちみつ15g 仕込み水105gのレシピを置き換える場合は、メープルシロップ18g 仕込み水102g使えば良いという事になります。

モノによって成分割合が違う!?正確な置き換えをするには?

ここまで砂糖やはちみつの代用としてメープルシロップに置き換えるやり方として、一般的な成分割合を使用させて頂きました。

ですが、商品によって微妙に糖分率や水分率が異なる場合があるので、より正確に作りたいのであればお使いのメープルシロップの成分表示を見て、糖分率と水分率を計算することをオススメします。

※水分率は成分表示に記載されていませんが、「〇gあたり」とは書いてありますよね?そこから表示成分すべて差し引けばおのずと水分が出ます。ビタミンやミネラルなどの微量すぎる成分は別に無視してもそんなに大きくは変わりません。

もっとメープル風味豊かなパンが作りたいなら…

メープルシロップをパン作りの材料として練り込んで使っても、小麦粉など他の材料とのせめぎあいで結局は隠し味程度の風味しか得られません。

「もっとメープル感のあるパンが作りたい!」

と思う方もいるでしょう。

その場合は、メープルチップ(フィールメープル)という固形粒状のメープルゼリーやつぶジャムメープル風味を具材として生地に練りこんだり、フィリングのクリームにメープルシロップを練り込んで使ったり、トッピングとしてメープルシロップを使うなどの選択が妥当かと思います。

メープルシロップはハチミツよりもサラサラなのでトッピングとしては扱いづらいかと思いますが、事前にジュレにしたりクリームチーズと練り合わせて使ったり、色々工夫の余地はあるかと思います。

ぜひ色々トライしてみてください!

オススメのメープル粒ジャム

つぶジャム メープルシロップ / 200g

この記事を書いた人
パン作り研究家
ナオキパン

当サイト及びYoutubeチャンネル「パン作りの教科書 / ナオキパンchannel」を運営。
パン作りのコツや製パン理論を科学的な観点からわかりやすく解説し、パン作り上達の楽しさを広めることに加え、正確な製パン情報の普及に努める。
ベーカリーや食パン専門店など数々のパン店立ち上げや現場責任者の経験有。
自律神経失調症によりパン業界を一時離脱した際に、自身の知識と経験が誰かの役に立つことを願い、2022年5月から本格的に情報発信活動を開始(現在は寛解しゆる~く復帰)。
パンシェルジュ一級。

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