“捏ね過ぎ”になるのが怖くて捏ねるのを控えめにしちゃう…
そもそも捏ねすぎると生地はどうなるの?
オーバーミキシングになるのが怖いから、という理由でこね具合を控えめにしてしまう人は多いでしょう。
しかし、結論から言うと一般的なパン生地では手ごねでオーバーミキシングになることはほぼありません!
この記事では、オーバーミキシングの生地の状態やどんな時に捏ね過ぎを注意すべきか解説します。
読者・視聴者様の声
“捏ね過ぎ”を心配せず、思いっきり捏ねられるようになった!
捏ね過ぎた生地がどうなるのかわかって、捏ね具合の見極めも上達した!
オーバーミキシングの生地ってどんな感じ?
ミキシングがオーバーしてしまったパン生地の特徴はこちらです。
- 弾力が弱くなる
- 粘着性が高まりべた付く
- 生地の丈夫さに劣り破れやすくなる
オーバーミキシングになりやすい条件
生地の種類や状態によって、オーバーミキシングになりやすいものがあります。
それぞれの要因から見ていきましょう。
粉の種類
グルテンが少ない粉を使った生地ほど、より短時間でオーバーミキシングになりやすいです。
なので、強力粉より中力粉、中力粉より薄力粉の方がオーバーしやすいため注意が必要です。
また、これは僕の体感ですが「米粉+小麦グルテンパウダー」のように小麦は使わずグルテンを添加して作る生地もオーバーしやすい印象があります。
高温になる環境
ミキシング中に生地が高温になってしまう条件も、オーバーミキシングになりやすいです。
例えば手ごねよりもスタンドミキサー、スタンドミキサーよりも業務用の大きいミキサーの方が馬力が強く、摩擦熱による生地温度とミキサーボウルの温度上昇があるため、放っておくとどんどん温度が高くなります。
また、同じミキシング方法でも寒いところと暑いところでは後者のほうがよりオーバーの危険が高まります。
グルテンは高い温度のほうがより早く結合するという特徴がありますが、その分オーバーするのも早いです。そういった特性があるために、高温環境ではオーバーミキシングにはより気をつけなければなりません。
オーバーミキシングとよく似た現象「生地が溶ける」
とても良く似た様相を見せるけれど仕組みは全く違う現象として、生地が溶けることが挙げられます。
添加した材料が低pH(強い酸性)のものだと、グルテンは繋がるどころか捏ねればこねるほどブチブチ切れていきます。
こちらはオーバーミキシングとは全く関係が無いので詳しくは割愛しますが、参考として出させていただきました。
薄力粉を使って手ごねでオーバーミキシングまで捏ねてみた
今回の検証は、手ごねでははたしてオーバーミキシングまで捏ねてしまうことはあるのか?という疑問を解決するためのものです。
そのため、あえてオーバーミキシングにより早くたどり着ける薄力粉生地を使って、力いっぱい捏ね続けてみました。
使用した生地はこちら
- 薄力粉:100%
- 食塩:2%
- 水:60%
この割合で作った、いわゆる小麦粘土です。
これをこね4分毎に生地の様子をチェックしてみました。
4分目で早速捏ねあがりの目安が見えた
オーバーミキシングになるのが早い、というのは言い換えれば捏ね上げタイミングも早く訪れるという事です。
5分捏ねるつもりが4分目ですでに生地表面はなめらかでツヤが出てきて、グルテンチェックをすると弾力はあるけれど指紋が透ける薄い膜ができました。
普通のパン生地ならここで捏ねを終了してしまうか、もう少しだけ弾力が低下して伸びが良くなるタイミングまで捏ねてもいいかな?と思う感じでした。
8分目でオーバーミキシングスレスレの最高ポイント
さらに追加で4分捏ねてみると、ふんわりソフトな食パンなどを作る場合においては非常にベストなこね具合の様子が見られました。
4分目ではコシがまだ強かったですが、すこし落ち着いて伸びの良さと表面のツヤ・滑らかさがさらに増しました。
ふんわりソフトなパンを作る場合、なめらかだけどコシが強い状態から更に捏ねて少しコシが弱まったタイミングが一番最適な捏ねあがり目安です。
このタイミングは「ファイナルステージ」と呼ばれるこね具合だと思われます。詳しくはこちらの動画をご覧ください。
12分目からベタつきが少し出てきた
そして更に4分追加で捏ねてみたところ、とても軽度ではありますがオーバーミキシングの様相を見せ始めました。
薄い膜が出来るという点では変わらずですが、コシが更に落ち着いて明らかに生地が伸びやすくなったのと、膜を作りやすくなったけど破れやすくもなってきました。
そして、4分目~8分目に比べて生地表面もべた付きが少し増してきました。
生地を捏ねるというのは、グルテン骨格をより細かくしていくということ。これ以上細かくなりきれないために無理が生じてグルテンが壊れ始めているのでしょうか。
合計20分捏ねてみた
しっかり生地に馬力を与えるために力いっぱい捏ねたので、20分でバテてしまいました…(笑)
ですが、結果はしっかり出ました。コシはとても弱くなり、薄い膜を作るために生地を伸ばそうとすると、いとも簡単に膜が出来ますがすぐに破れます。この写真ではその破れやすさが伝えきれていませんが…とにかく生地が柔らかくなりました。
そして何よりベタつきが酷くなり、こね台にこびりつきます。一見生地表面は滑らかであることに変わりないのですが、触ればベタっとします。
さらに、生地をつまんで引っ張ってみると簡単に千切れます。
通常、生地は伸びても弾力(つまり形が戻る力)も丁度良い状態であれば、つまんで引っ張っただけでは千切れません。千切れるよりも、生地は台にもこびりつかないため持ち上がるはずです。
検証のまとめ
手ごねでオーバーミキシングになるのか?
今回、強力粉よりはるかに早くオーバーミキシングに到達しやすい薄力粉を使用した生地を使ったため、なんとか手ごねでオーバーミキシングの入り口まで到達できました。
恐らくあと20分捏ね続けていたらもっとオーバーらしい様相が見れたかもしれませんが、普段より力を込めてやったのでなかなか厳しいです。
なので、通常のパン生地のように強力粉生地を手ごねでオーバーミキシングまで捏ねるのはかなり厳しいでしょう。
皆さんが普通にパン作りをする上でオーバーミキシングを恐れる必要はないでしょう。
※ただしフランスパン生地をふんわり食パンと同じ程度まで捏ねてしまうと、生地が壊れることはなくとも好ましい生地ではなくなるので、そういう意味でのオーバーミキシングは気をつけましょう。
最強力粉・超強力粉100%を手ごねは無謀?!
スーパーキングやゆめちからなど、グルテン量がとても多い粉100%で手ごねパンを作る人をたまに見かけますが、強すぎる粉は手ごねでは扱いきれないと考えた方がいいでしょう。
オーバーミキシングまで捏ねられないどころか、最適捏ね上げタイミングまで捏ねるのに相当な労力がかかります。
スタンドミキサーでも使わない限り、最良のこね具合までは捏ねられないでしょう。
いくらグルテン量が多いとはいえ、捏ね不足では逆にそれが足かせとなり、本来得られるはずの膨らみも十分に得られません。
タンパク量が多いと冷めた時にいっそう引きが強くなる傾向があるため、十分な膨らみを得られずに焼いたパンは食べにくさを感じるでしょう。
ゆめちからは「グルテン量の少ない日本の小麦粉をもっと使って欲しい」という目的で作られたブレンド用の粉です。
弱い粉に最強の粉をブレンドすれば、国産小麦の使用用途をグンと広げられるからです。
オーバーミキシングの入口程度ならリカバリーできる
今回の検証でいきついたオーバーミキシング生地程度なら、まだ復活はできます。
生地温度を冷やして何分か寝かせることで生地のコシをある程度復活できます。
今回たまたま部屋が寒かったのと使ってる生地量が少なかったため、実験後に放置してたら生地が冷たくなって弾力も元に戻りました。
なので、もしスタンドミキサーなど使って生地を作っている方が多少オーバー気味になってしまったなら、ちょっと生地の温度を下げてその後の発酵温度も低めに設定して作り続けてみてください。
オーバーミキシングの成れの果てってどんな感じ?
業務用のミキサーでパンを作る場合にはお目にかかれるかもしれませんが、オーバーミキシングが過ぎると最終的に生地が完全に壊れてドロドロになります。
こね具合の段階を表す言葉でいうと「ブレークダウンステージ」といいます。
流石にこの段階まで来たら復活は無理です。しいて言うならベルギーワッフルに転生させてあげれば、まだ何とか美味しく食べられるかもしれません。
流石にそこまでの失敗をしたことがないから断言はできないけど、誰か失敗したらやってみてください(笑)
まとめクイズ
A.「○」。
コシがどんどん弱くなっていき、最終的にはドロドロになります。
A.短くなる。
グルテンが少ない粉ほど「ファイナルステージ」に早く到達します。