最近の家庭用オーブンレンジは多機能のものが多く、それ一台あれば発酵から焼成までまかなうことができます。
ですがその場合、レシピ通りに進めると思わぬ失敗に遭遇する落とし穴があります。
この記事では、より完成度の高いパンを安定して作れるようになるために注意すべきポイントを解説します。
読者・視聴者様の声
オーブンレンジの発酵機能について、今まで誤解してました…!
夏のパン作りで過発酵を防げるようになりました!
焼成前の予熱時間を逆算して
発酵から焼成までを一台のオーブンレンジで行う場合に必ず考慮すべきポイントをお伝えします。
パン生地の発酵はノンストップである
まず前提として、パン生地の発酵というのは焼いて酵母菌が死滅するまで(又は冷凍するまで)はノンストップです。
「オーブン庫内に入れて発酵モードをスタートさせた瞬間から発酵が始まる」というものではなく、加えて「発酵モードをストップさせた瞬間に生地の発酵も止まる」というものでもありません。
発酵モードというのはあくまで庫内を温めるだけの機能です。
そして生地の発酵も、イースト・水・糖分が混ざり合ったその瞬間から始まります。
発酵モードなんて使わなくても、部屋の片隅に放置しておくだけでも生地の発酵は進むのです。
ただ、その速度は生地の温度で変わってしまうため、なるべく生地の温度を一定に保つための手助けとして使うのが発酵モードや発酵器というわけです。
これを踏まえて考えると、もしレシピに「二次発酵 38℃/50分」と書いてあるからといって、馬鹿正直にオーブンレンジ内で50分間発酵させるとどうなるでしょう?
その後には焼成が控えていますから、一旦生地を取り出して予熱を開始しますよね?すると…
予熱をしている間にも発酵がどんどん進んじゃう⁉
その通りです!
パン屋さんのように発酵場所と焼成場所が別々であれば、急いで窯に入れれば済む話です。
しかしオーブンレンジの予熱にはどうしても10分前後の時間を要してしまいます。
その10分で発酵オーバーとなってしまうケースは非常に多いです。
特に気を付けたいのが角食パン。
最終発酵の終盤は生地も十分に緩んで非常に膨らみやすい状態です。たった5分の油断でも命取りとなり、型の中でパンパンに膨らんで非常に角ばった食パンになってしまいます。
(いわゆる「ホワイトライン1」の無い角食パンになります)
ホワイトラインが無いのって何がダメなの?見た目だけ?
実は見た目だけでなく味や食感にも影響します。
一台のオーブンレンジで発酵と焼成を行うなら、発酵は早めに切り上げて予熱を開始しましょう。
その間の生地の乾燥が心配であれば、ビニールをかけておくとか霧吹きで湿らしたり工夫をしましょう。
焼成前に塗り卵をする場合は、表面を乾かしてから塗った方が塗りやすい上にキレイな焼き上がりに仕上がります。
なので予熱の待ち時間はむしろ好都合と言えます。
季節(室温)に応じて事前に発酵を切り上げるタイミングを微調整する
予熱完了のブザーが鳴っても、実温度が設定温度まで上がり切っていない場合も多いです。
そもそもオーブンレンジの温度センサーは庫内上部の隅に設置されていることが多く、そして熱源であるヒーターも天面にあるため、センサー部より温度が低い部分があるのは仕方のないことです。
十分に庫内の実温度を上げるために予熱を10分延長すると、その間に生地は約20分放置されることになります。
特に夏は室温が高く、予熱待ちの間にも発酵がグングン進みます。
かといって冬は逆に室温が低く乾燥もしているため、同じ20分の放置でも夏と比べたら発酵の進みは緩やかです。
「予熱のために二次発酵を何分早く切り上げるか」
それはその時の室温に合わせて調整しましょう。
予熱温度の管理に超便利!
必ずしも設定した温度通りにはならない
オーブンレンジに搭載されている発酵機能は5℃刻みで30℃・35℃・40℃に設定できる機種が多いですね。
ですが30℃で設定したからといって、必ず実温も30℃になるとは限りません。これは焼成の予熱と同様です。
お使いの機種の個体差でも変わってきますが、おそらく2~3度上下する可能性を視野に入れておきましょう。
特に設定より高い温度になってしまう場合は、発酵が進みすぎてしまう恐れもあるため、途中でオフにしてバランスを取ってみたり、時間を縮めてみたりと何かしらの工夫をしましょう。
また、お部屋が寒い場合は扉の開け閉めで庫内温度はすぐに下がります。
「30℃で60分」その通りにやったのに、膨らみ悪いなぁ…
扉を頻繁に開け閉めしていませんか?
また、発酵機能をスタートさせる前の庫内温度が低ければ、設定温度に達するまでに時間がかかるわけですから、そこの誤差でも発酵速度は変わってきます。
あらゆる外部要因が生地の発酵速度に影響を与えるため、100%正確に温度を管理するのは難しいでしょう。
その日の室温が低ければ「今日は発酵遅くなるかもなぁ…」と予測だけしておいて、最終的な判断は生地の状態を重視して考えましょう。
湿度が高くなりすぎる場合があること
特に二次発酵(最終発酵)で注意したいポイントです。
まれに発酵モードで庫内湿度が高くなりすぎてしまうことがあります。これは機種によってもかなり差があります。
湿度の高すぎは、生地表面を湿らせすぎることで以下のような懸念があります。
- クラスト(表皮)が硬くなる
- 表面に斑点やシワが出来やすい
- 火ぶくれが生じやすい
- 焼き色が濃くなりやすい
特にブリオッシュなどリッチな生地ではクラストの硬化が顕著となる傾向にあります。
もし、普段から発酵機能で生地表面が濡れすぎていてこのような症状も気になるのであれば、庫内の温度が十分に上がったら一旦オフにしてみたり、10分おきに発酵モードを使ったりなど、何かしら工夫することをおすすめします。
まとめクイズ
A.「×」。
生地の発酵速度は常に生地自体の温度次第です。急に止まることはあり得ません。
A.問題ない。
むしろ、塗り卵をする場合は表面を適度に乾かす方が塗りやすいしキレイなツヤが得られます。
<脚注>