薄力粉だけでパンは作れる?プロが教える薄力粉パンの特徴と絶品レシピ

薄力粉だけでパン

強力粉の代わりに薄力粉だけでパンは作れないの?

ナオキパン
ナオキパン

薄力粉でも作れるけど、コツが必要です!

薄力粉だけで作るパンには、強力粉パンでは味わえない違った美味しさがありますが、作るには様々なコツが必要です。

この記事では、薄力粉パンの特徴と作る際のコツや注意点について解説します。

薄力粉は強力粉の代用として使えるのか?

代用」という言葉をどう捉えるのかによって答えが変わってくるので、ここでは「全く同じモノかほとんど似たようなモノが作れること」という意味で話を進めます。

その前提で行くと薄力粉は強力粉の代用にはなりません

しかし、薄力粉でパンを作ることは可能です。

強力粉で作るパンとは配合や仕上がりも全然別物にはなりますが、強力粉パンでは味わえない独特な美味しさが味わえるパンを作ることが可能です。

実際にどんなパンが出来るのか、その特徴を見ていきましょう!

薄力粉パンの特徴

  • 歯切れ・口溶けがバツグンに良い
  • ほんのり甘い香り

通常の強力粉で作った生地は、グルテンが多く弾力が強いです。

グルテンはたんぱく質の結合体ですから、これが多いほど噛み切りにくく”ムギュッ”とした歯ごたえが増します。

このような歯切れの悪さを「引きが強い」と言ったりもします。

一方で薄力粉はグルテンが少ないため非常に歯切れが良く、口の中でお団子のように固まらず良好な口溶けを感じられます。

グルテンの割合が少ない分だけ代わりにでんぷんが多くなっているのですが、でんぷんは唾液中の酵素「アミラーゼ」によって消化されるため、それが口溶けに差が生まれる原因です。

グルテンは唾液では消化できません。

また、強力粉で作ったパンはワイルドな小麦の香りがする傾向にありますが、薄力粉はどちらかと言うとケーキらしさのある甘い香りがほんのり感じられます。

薄力粉パンのデメリット

  • 吸水能力が劣るためパンが老化しやすい
  • しっとり感も両立しようとするとベタついた生地になる
  • 最終的な製品ボリュームが小さくなる

薄力粉は強力粉に比べてグルテンが少ないため、吸水能力が劣ります。

なので比較するとどうしても強力粉パンより老化が早いです。

また、強力粉生地と同じ程度の扱いやすさまで吸水を減らすとかなりパサついたパンになるため、最低限しっとり感も確保したパンを作ろうとすると、どうしてもベタつきが強く柔らかい生地となり扱う難易度がやや高くなります

そしてグルテンが少ないため生地のガス保持力も低下し、どんなに上手に作ったとしても最大限の大きさは強力粉パンには敵いません。

薄力粉でパンを作ってみよう!

強力粉で作る前提のレシピを薄力粉に置き換えて作るには、吸水を減らしたりレシピの調整が必要となるため、慣れていない方にはオススメできません。

まずは薄力粉100%で作ることを前提に調整された専用レシピを使ってみましょう!

以下におすすめレシピと薄力粉でパンを作るにあたっての注意点をお伝えします!

おすすめの薄力粉パンレシピ

オーバーナイトで超しっとり!デメリットを克服した薄力粉角食

薄力粉100%パンの大きなデメリットである「老化の早さ」を、オーバーナイト法を採用することで解決した究極の薄力粉パンです。

薄力粉パンとは思えないしっとりフワフワ食感と、薄力粉でしか味わえない至高のサクみと口溶けを両立した新感覚の角食パン。

以下に配合表を提示します。

材料重量(g)BP(%)
薄力粉250100
イースト31.2
食塩52
脱脂粉乳52
はちみつ2510
ヨーグルト5020
10542
バター208
※イーストはインスタントドライイースト使用
※バターは無塩バター使用
※ヨーグルトは無糖のプレーンヨーグルト使用
捏ね上げ温度24℃
一次発酵27℃ 10P
冷蔵発酵一晩(10~15時間)
分割丸め228g
復温ベンチ30分~
生地温度17℃以上
成型丸め楕円
最終発酵35℃ 60分~
膨らみ具合で判断
焼成210℃ 24~25分
詳しい作り方は動画をご覧ください。

☆ヨーグルトはコク・香り・生地コシを向上させる目的で配合しています。この量だとほんのり酸味が残る仕上がりになりますので、気になる方はヨーグルト10%(25g)に変更し、水50.8%(127g)に調整しても構いません。

使用する型はコチラ!


浅井商店 アルタイト食パン型
12cm正角型 1斤

購入はコチラから!

ストレート法で作る基本の薄力粉100%山食パン

「薄力粉で作ったよ」って言っても誰も信じてくれなかった!

そんなクオリティに仕上がる基本的な薄力粉食パンです。

前項のレシピと違って生地を作ったその日のうちに焼きあがるので、まずは基本を体感したい方や手軽に作りたい方にもオススメ。

以下に配合表を提示します。

材料重量(g)BP(%)
薄力粉260100
イースト3.11.2
きび砂糖15.66
食塩5.22
脱脂粉乳7.83
6262
バター33
ラード33
※イーストはインスタントドライイースト使用
※バターは無塩バター使用
※ラードはショートニングで代用可能
※きび砂糖は上白糖・グラニュー糖で代用可能
捏ね上げ温度27℃
一次発酵27℃ 30P30
分割丸め225g
ベンチタイム15分
成型俵型
最終発酵38℃ 50分
膨らみ具合で判断
焼成210℃ 24~25分
詳しい作り方は動画をご覧ください。

使用する型はコチラ!


浅井商店 形のいい山食のための
アルタイト新食パン型 1斤

購入はコチラから!

しっとりして美味しいですが、強力粉で作る吸水70%レシピに比べたら老化は早いです。
その日のうちにスライスして冷凍しましょう。

手軽に作れる薄力粉ミニ食パン

いきなり食パン1斤で作るのは大変そう…
失敗したら材料も無駄になりそう

そんな不安がある方は、粉150gで作れるこちらのミニ食パンのレシピでトライアルしてみましょう!
以下に配合表を提示します。

材料重量(g)BP(%)
薄力粉150100
イースト1.81.2
きび砂糖96
食塩32
脱脂粉乳32
9362
バター96
※イーストはインスタントドライイースト使用
※バターは無塩バター使用
※きび砂糖は上白糖・グラニュー糖で代用可能
捏ね上げ温度27℃
一次発酵27℃ 30P30
分割丸め90g
ベンチタイム15分
成型丸め
最終発酵38℃ 40分
焼成210℃ 16分
※詳しい作り方は動画をご覧ください。

使用する型はコチラ!


貝印 スリムパウンド型 (小)

購入はコチラから!

セリアに売っている似たサイズのパウンド型でも良いですが、火通りがだいぶ劣るので風味や味も劣化するため上記商品を使用することをオススメします。

薄力粉100%で作る際の注意点

水を減らさずレシピ通り作ってみること

ご提案した薄力粉パンのレシピは、全て薄力粉100%で作る前提として配合を調整済みです。

ある程度の作りやすさと美味しさを両立することが出来る絶妙な配合となっています。

なんだか普段使っているレシピよりベタつくなぁ

と感じても粉を追加しないでください。その時点で美味しさは半減します。

そうは言っても、ベタベタしてたら捏ねられないじゃん!

と思う方は、そもそもパン生地のこね方が間違っている可能性が高いです。

なぜならパン生地の捏ね始めはベタベタするのは当たり前で、正しい捏ね方ならベタつく生地でも捏ねられるからです。

こちらの記事で正しい手ごねのやり方を解説しているので、ベタベタする生地は捏ねられないと思う方は先にご覧ください。

手粉を適量使うこと

レシピ通りの配合で良い生地が捏ねあがった場合、例え生地表面がツヤツヤ滑らかでも多少のベタつきがあります。

先述のとおりミキシングでは粉を追加してはいけませんが、分割丸めや成型では生地が作業台や手にべったりくっついてしまわないように手粉を適切に使いましょう!

手粉に使う粉は普段通り強力粉で構いません。

どのくらい手粉を使うべきなのか、についてはレシピ動画を参考にして自分なりにコツをつかんでみてください。

ナオキパン
ナオキパン

手粉は少なすぎても多過ぎてもNGです!

イーストは必ずインスタントドライを使用する

私はいつもセミドライイーストを使ってます!

そんな人でも薄力粉100%のパンでは必ずインスタントドライを使用してください。

なぜかというと、セミドライイーストにはビタミンCが添加されていないため、インスタントドライに比べて生地のコシが弱くなるからです。

クリームパンやピザなど薄く伸ばす成型ではビタミンCによる過剰な弾力が仇となりますが、薄力粉でのパン作りにおいては薄力粉の弱小グルテンを強化してくれるありがたい存在です。

ビタミンCってパン作りではどんな働きがあるの?

ナオキパン
ナオキパン

それについてはグルテンについて詳しく解説しているコチラの記事をご覧ください!

なるべく早めにスライス冷凍しよう

一般的にネット上に出回っているような薄力粉100%パンのレシピに比べたら、ある程度パサつきの抑えられたパンになるレシピをご提案しています。

ですがそれでも上手に作った強力粉パンに比べると老化は早いです。

なので焼きあがって十分に冷却したらなるべく早いうちにスライスして冷凍保存することをオススメします。

ご提案したパンレシピに関しては、生で食べるよりトーストしてサックリ感を味わっていただく方がより美味しく召し上がって頂けるはずです。

まとめ

ここで学んだポイントをおさらいしましょう!

  • 薄力粉は強力粉の代用にはならないが、薄力粉でパンを作ることは可能
  • 薄力粉100%で作ったパンは歯切れ・口溶けが良い
  • 強力粉生地よりベタつきが強いが、ミキシングで粉は追加しないこと
  • 分割や成型では手粉を適量つかって上手く対処する

薄力粉でしか味わえない独特な美味しさを知っておくことで、今後作るパンの幅も大きく広がることでしょう。
ぜひトライしてみてください!

この記事を書いた人
パン作り研究家
ナオキパン

当サイト及びYoutubeチャンネル「パン作りの教科書 / ナオキパンchannel」を運営。
パン作りのコツや製パン理論を科学的な観点からわかりやすく解説し、パン作り上達の楽しさを広めることに加え、正確な製パン情報の普及に努める。
ベーカリーや食パン専門店など数々のパン店立ち上げや現場責任者の経験有。
自律神経失調症によりパン業界を一時離脱した際に、自身の知識と経験が誰かの役に立つことを願い、2022年5月から本格的に情報発信活動を開始(現在は寛解しゆる~く復帰)。
パンシェルジュ一級。

ナオキパンをフォローする
パンレシピ(難易度★★☆)
ナオキパンをフォローする
タイトルとURLをコピーしました