ドライイーストの粒が溶けずに残っちゃった!
皆さんが普段お使いのインスタントドライイーストは、「粉に直接混ぜて使える」という説明書きがありますが、実は粉に混ぜてはいけない場合もあります。
この記事ではインスタントドライイーストの正しい使い方について解説します!
「ドライイースト」と「インスタントドライイースト」
本当はそれぞれ全くの別物なんです
溶け残りがあるとどうなる?
イースト粒が溶け残ってしまうと…
- イースト臭が際立ってしまう(むしろイースト味が際立つ)
- 色付き生地だと粒が目立つ
- 生地の膨らみ方に悪影響を及ぼす
このようなデメリットがあります。
イースト臭が際立ってしまうと粉をはじめとした他の風味を殺してしまうため、なんとしても避けたいところです。
全く膨らまないわけではありませんが、酵母菌が生地全体に均一に広がっていないため、膨らみが遅く感じられることがあります。
溶け残ってしまったイースト粒はどうする?
イースト粒が大量に溶け残った…
捏ね直せばなんとかなる?
残念ながら一度溶け残ってしまったイースト粒は、どんなに捏ねても溶けない場合が多いです。
もし無理やり溶けるまでミキシングを追加した場合、最悪オーバーミキシングとなる可能性もあります。
コチラの記事でイースト粒の溶け残りの際の対処法をご紹介しているのでご参考に。
ドライイーストを先に溶かす必要があるパターン
インスタントドライイーストは基本的には粉に混ぜて使えます。
事前に溶かしてから使わないといけないパターンは限られています。
なので、そのパターンを覚えておけば失敗を無くせるはず。それぞれ詳しく見ていきましょう!
牛乳・卵などを多く使うパン
水と比べて牛乳や卵はイーストが非常に溶けにくいです。
そのため、牛乳仕込みのパン・オ・レや卵を多く使うブリオッシュなどでは捏ね上げてもイースト粒が残ってしまう場合が多いです。
特にブリオッシュはバターを多く使う分、意外と吸水量が少ないレシピなので溶け残る可能性が高いです。
水分量の少ないパン
ベーグルのように水分量が少ない生地の場合もイーストを先に溶かす必要があります。
イーストが完全に溶け切る前に粉が水を全て吸いきってしまうことで、溶けるために必要な水分がなくなってしまうのです。
本生地のみならず中種のような水分量が少ない発酵種を作る際も同様です。
捏ね時間が短いパン
事前にイーストを溶かす必要のない配合であっても、捏ね時間が短いレシピにおいてはイーストを先に溶かしておく必要があります。
特に「捏ねない」レシピだと、イーストが溶けきるために必要な混捏が出来ないため溶け残る可能性が非常に高いです。
この場合イーストだけでなく、砂糖や塩などの材料も混ざり具合が不均一になるため事前に溶かすことをオススメします。
2種類の粉をブレンドするレシピなら、粉もしっかり混ぜ合わせておこう!
高加水など生地が緩いパン
水分量が多くユルユルで柔らかい生地の場合、ミキシング時に生地に与えられる圧力が弱まってしまいます。
その結果、特にインスタントドライイーストのように細かい顆粒状のものは生地に馴染まず溶け残ってしまう可能性が高いです。
ドライイーストの溶かし方
- 仕込み水(又は牛乳)に均一にふりかける。
- すぐには混ぜず数秒待つことでイーストがふやけて混ざりやすくなる。
- ホイッパーでよくかき混ぜる。
卵を多く使うレシピの場合は、卵と水を混ぜ合わせる前に水の方にイーストを溶かす方が溶けやすいです。
また牛乳を使う場合は水よりも溶けにくいので気持ち長く待ってからかき混ぜた方がいいです。
数秒待つ手順を踏んでいればイーストはある程度ふやけているので、少し粒が残っているように見えても問題ありません。
しっかりふやけていれば、その後の捏ねでイーストは馴染みます。
冷水を使う場合は要注意!
夏場は粉温・室温ともに高い状態で作らざるを得ないため、キンキンに冷えた水(0℃前後)で生地を仕込む場合も多いでしょう。
ですが、通常のインスタントドライイーストは冷水耐性が決して強くないので、冷水をイーストめがけて直接注ぐと活性が落ちてしまう場合があります。
でも冷水使わないと捏ね上げ温度が高くなる…
この場合はどうすればいいの?
対処法は…
- 粉に混ぜてOKなケースなら粉に混ぜる。
- 仕込み用の冷水とイースト溶かす用の常温水で分けて用意する。
- 水と氷で分ける
- 冷水を使わずに済むよう、粉を事前に冷やしておき室温も低く調整する。
こちらの項目で紹介した4つのパターンに当てはまっていなければ、わざわざ事前に溶かす必要はないので、粉に混ぜてから使いましょう。
粉に混ぜるだけで大丈夫なの?
粉と水を合わせた時に温度が平均化されるので、イーストへの冷水負担が減るんです
4つのパターンに当てはまっている場合は溶かさなければいけないので、その場合はイーストを溶かす用だけ常温にしましょう。
元々の仕込み水量が70gでイーストが1gなら、冷水60gと溶解用10gといった具合に分ければ良いでしょう。
水と氷を合わせて仕込み水として使用することもできます。
元々の仕込み水量が70gなら水50gと氷20g、といった具合に分けます。(最適な割合はその時の室温や粉温など様々な要因で変わります。)
水を10℃ぐらいにしておけばイーストへの冷水負担もかなり減るので溶かして使うことも可能ですし、氷を使っているため捏ね上げ温度も下げられます。
ただし大きな氷だとミキシング中に溶けて生地に混ざるまで時間がかかるので、できれば細かい氷を使うことをオススメします。
冷水を使わずに済むよう粉温を冷やしておく手段もあります。
ただしミキシングに時間がかかる場合はそれだけでは対処しきれないため冷水も併用することになるでしょう。
冷水耐性のある唯一のイースト
セミドライイーストは冷水耐性が強いため、0℃前後の冷水を直接注いで溶かしても活性を損なう心配がありません。
その上、インスタントドライイーストよりも水分が多く残っているため溶けやすいメリットもあります。
容量が大きい商品しか販売されていませんが、冷凍保存なので保存性もバツグンです。「期限までに使い切れない」という心配も無用です。
ただし2つ注意点があります。
- インスタントドライイーストから置き換える際は使用量を調整する
- ビタミンC無添加のため生地感が大きく変わる
置き換え時の計算について、一回の計算式で終わらせようとするなら1.166倍すればほぼ同等な発酵力で置き換えることが出来ます。
ビタミンCの有無による生地感の違いについてはコチラの記事で解説しています。
生地感の違いはメリットとなる場合もあればデメリットとなる場合もあります。しっかり熟知した上で適切かどうか判断しましょう。
イースト後入れレシピは要注意!?
フランスパンなどのハード系のレシピの中には、イーストを粉にも水にも混ぜず、生地が出来てから後入れする製法のものが多いです。
ですがこの製法だと最初から粉に混ぜて使用するパターンよりも更に溶けにくいため注意と工夫が必要です。
そもそも、なんでイーストを後入れする必要があるの?
その理由と実際の対策について見ていきましょう!
イーストを後入れする理由
そもそもなぜハード系のレシピでイーストを後入れするのか?
それは、イーストを入れるより前に生地のでんぷん分解を事前に進めておきたいからです。
フランスパンなどハード系のパンは砂糖を使いません。
発酵に必要な糖分は生地のでんぷん分解によって生じる麦芽糖に頼るしかありません。
でんぷんの分解は小麦に元々含まれている酵素や添加したモルトに含まれている酵素によって行われます。
イーストを最初から入れてしまうと、糖分が生成されたそばからどんどん消費されてしまうので、最終的に残存する糖分量が少なくなってしまいます。
結果、甘味が薄いパンになってしまう。
イーストを入れる前に粉と水(とモルト)を混ぜて数十分寝かせる「オートリーズ」を設けることで、麦芽糖を事前生成することが可能となり、発酵に必要な糖分が枯渇することもパンの甘味が減少することも防ぐことができるのです。
イースト後入れでも溶け残りを残さない方法
インスタントドライイーストは生地にそのまま混ぜようとすると溶け残る確率がかなり高いです。
なので、上記のようなオートリーズを設ける製法で作るのであれば、このような手法を使うことをオススメします。
- イーストを生地に万遍なく振りかける。
- 霧吹きで軽く湿らせる。
- レシピ通りオートリーズをとり、その後ミキシング。
このやり方ならオートリーズの間にイーストがしっかりふやけてくれるため、次のミキシング工程でイーストが生地と馴染んで溶け残りを避けることができます。
「予備発酵不要」でも予備発酵した方が良い?
インスタントドライイーストは本来「予備発酵不要」です。
予備発酵をした方が良いって聞いたけど…?
予備発酵をする方が良い結果となる場合もありますが、それはあくまで特殊なパターンです。
理論的には悪い影響を与えてしまう可能性もあるため、やみくもに予備発酵をさせることはオススメしません。
その理由について、詳細はこちらの記事で解説していますのでぜひご覧ください。
まとめ
ここで学んだポイントをおさらいしましょう!
- インスタントドライイーストは基本的には粉に混ぜて使えるが、事前に溶かさなければいけないパターンがある。
- 無糖生地ではイーストの後入れが美味しさのカギだが、溶け残らないよう工夫する必要がある。
- 予備発酵は溶け残りのリスクは無くせるが、基本的にはさせる必要も無い上、理論的にはさせない方が良い。
イーストの説明書には書かれていないけれど重要な使い方、ぜひマスターして失敗を無くしましょう!