発酵で失敗しちゃった…どうすればいい?
そもそもどこまでならセーフなの?
この記事では、そんな悩みを解決する発酵失敗の対処法やリメイク手段について解説します。
一次発酵での失敗
一次発酵はパン作りの工程の中でも前半に位置するので、その後の工程での調整次第では十分にリカバリー可能です。
ここではよくある失敗のパターン別に解説します。
イーストの入れ忘れに気付いたら…
生地を捏ね上げて発酵させてる最中に、
全然膨らまない…イースト入れ忘れてた!
と気付いた場合、イーストを加えて捏ね直すことが可能な場合と出来ない場合があります。
ソフト系の場合
食パン生地や菓子パン生地などソフト系のパンは、元々しっかり捏ねることが大前提のパンです。
そのため、後からイーストを加えて捏ね直してもオーバーミキシングになりにくく、何事もなかったかのようにリカバリーすることも可能です。
セミハード系、ハード系の場合
セミハード系やハード系のパンはソフト系と比べて捏ね時間が元々短い前提で作られることがほとんどです。
そのため後からイーストを加えて捏ね直してしまうと捏ねすぎになってしまう可能性が高いです。
なのでその場合は本来作りたかったパンは諦めて、代わりに別のアイテムへリメイクすることをオススメします。
イーストの後入れで注意すること
イーストを加えて捏ね直す場合に絶対に注意すべきことがあります。
既に完成した生地にインスタントドライイーストを後入れすると、粒が溶け残ってしまう可能性が非常に高いです。
特にソフト系のパン生地には油脂が練り込まれているため、イーストが溶けて分散するより先にイースト粒が油でコーティングされてしまい余計に溶けにくくなります。
なので、イーストを事前に少量の水と混ぜ合わせペースト状にしておくことをおすすめします。セミドライイーストの場合も同様です。
生イーストならインスタントほどではないですが、やはり後入れだと溶け残りの心配はゼロではありません。
最低限、加える前に細かく砕いてそぼろ状にしておきましょう。こちらも少量の水でペースト状にしたほうが溶け残りの心配は減らせます。
一次発酵がオーバーした場合
基本的にオーバーしてしまったものは戻すことは出来ません。
ですが許容範囲はあります。
例えば60分発酵のところ30分オーバーして90分になってしまったケースであれば、それくらいなら案外ちゃんと美味しいパンに仕上がることが多いです。
実際に発酵オーバーさせてパンを作るとどうなるか実験した動画がありますので参考にご覧ください。
大事なのは生地の状態を確認すること。
フィンガーチェックをしてみて生地がぷすーっと勢いよく萎んでしまったり、匂いを嗅いだら強過ぎて不快なアルコール臭(行き過ぎると酸味臭になる)がするといった状態なら諦めるべきです。
ただしオーバーナイトさせた生地などはアルコール臭が目立つ傾向にありますが、あくまで程よく心地よいアルコール臭なら問題ありません。
不快と感じるか否か、ご自身の感覚で判断してもらって構いません。
厳密に調整して作るなら、例えば一次発酵30分オーバーしてしまったなら、その後の丸めをかなり弱くしてベンチタイム20分を10分に変更したり、最終発酵が普段より早く進む可能性を視野に入れて調整すると良いでしょう。
こうした調整での肌感覚をつかむには、こちらの動画をご覧ください。
二次発酵での失敗
二次発酵がオーバーした場合
二次発酵(最終発酵)の場合、次は焼くだけなので失敗をリカバリーすることは出来ません。
ですが許容範囲内であればなんとか形にする事は可能です。
発酵が少しオーバーしてしまった生地は、糖分が過剰に消費されているため焼き色がつきにくいです。
なので、通常より高めの温度で焼成することで同じ時間でも求める焼き色に近づける事ができます。
逆に同じ温度で時間だけダラダラ延ばして焼くと、水分蒸発が増えてパサつきやすく表皮が分厚い仕上がりになってしまいます。必ず温度で調整しましょう。
また、角食パンで二次発酵をオーバーしてしまうと、焼き上がりがカックカクになってしまい腰折れしやすかったり、そもそも蓋が閉められないといった状況にも陥ります。
この場合は無理に角にせず山型食パンにしちゃいましょう。
無理に蓋をすると型が歪んだり開ける時にパンが爆発する恐れもあるので危険です!
二次発酵オーバー生地の特徴
二次発酵がオーバーしてしまった生地の特徴をまとめておきます。
- コシが弱く窯伸びが小さい
- 甘味が少ない
- 発酵風味は強い
- 焼き色が薄い
- 内相が粗い
甘味・風味・内相については修正できませんが、焼き色だけでも焼成で調整したいところですね。
ちなみにパンの風味の大部分は焼き色からくるメイラード反応の香りです。
焼き色をこだわることはパンの風味にこだわることと同じです。
なぜうまく膨らまない?その原因
レシピ通りのはずなのに、思うように膨らまない…
酵母菌の発酵が遅いのかな?
生地の膨らみが遅い原因は、酵母菌の発酵力だけではありません。
生地の膨らみが遅い場合に考えられるあらゆる原因は…
- 生地の温度が低くなってしまった
- 使用した酵母菌の活性が弱い
- レシピの想定よりも生地が硬い
- 丸めや成形などで生地を締めすぎた
それぞれ詳しく見ていきましょう。
生地の温度が低い
捏ね上げ温度が低かったり、室温が低過ぎて作業中に生地が冷えてしまったりなど、あらゆる影響から生地の温度が冷えてしまうと発酵は遅くなります。
20℃と27℃の生地をそれぞれ同じ27℃の部屋で発酵させると、当然前者は発酵が遅い。それは発酵速度というのは酵母菌が今そこに居る環境(つまり生地の中)の温度次第だからです。
人間と同じです。皆さんも冷凍倉庫に入った直後はまだ元気に生きていますが、次第に体温が下がっていき元気がなくなり、最終的に凍死しますよね?
寒い部屋に入ったから凍死するのではなく、寒い部屋に入って結果的に体温が低下してしまったから凍死するのです。逆に体温さえ下がらなければ凍死しません。
使用した酵母菌の活性が低い
開封後かなりの日にちが経過してしまったイーストは、開封直後に比べて発酵力が劣っている場合が多いです。
これによって普段通り・レシピ通りにやっていても発酵が若干遅いという現象に見舞われます。
レシピの想定よりも生地が硬い
意外と見落としがちな点ですが、あらゆる要因によってレシピ作成者の想定よりも硬い生地が出来てしまっているパターンも多いです。
例えばこんな要因があります。
- ミキシング中に余計に粉を加えた
- 水分が少なすぎる
- 使った粉の種類がかなりの系統違い
- 丸めや成型など手作業の締め加減が強すぎ
いずれにせよ、この場合の「発酵が遅く感じる」のは、酵母菌の発酵が遅いというよりは生地が硬くて膨らみにくくなってしまっているのが大きな原因です。
新品の硬い風船って膨らませにくいですよね?それと同じです。
あまりに酷いと生地が硬いだけでなく柔軟性も不足していてガス保持力が弱いので、少しずつガス漏れしている場合も多いです。
十分な大きさまで膨らむのを待っていたら中身は過発酵になっていた、なんてケースにもなりかねません。
過発酵で失敗したパン生地をリメイクするには?
最悪、発酵オーバーでアルコール臭がちょっと強いな〜と感じたら、ピザにしちゃうのがおすすめです。具材たっぷり、しっかり焼成すればある程度は誤魔化せるでしょう。
また、ナンにしてカレーなど味の濃いものと一緒に食べるのも良いですね。
あるいは、その場では焼かずに「古生地」として冷蔵庫で保存しておいて、次回パンを作る際に粉に対して10%量ほどを「老麺」として材料に加えてしまうのも良いですね。
パン屋さんでも生地が余ってしまった場合に、冷蔵庫に保管して翌日の仕込みで生地に混ぜ込むのはよくあることです。
これは老麺法になるのですが、10%ほどしっかり使えば生地のこね時間が短縮できたり発酵風味がより豊かになるなどメリットも大きいです。
ただし発酵力も強くなるので、再び発酵オーバーの失敗をしないように注意してください。
まとめ
ここで学んだポイントをおさらいしましょう!
- イーストの後入れは溶け残りに注意する
- 一次発酵のオーバーは許容範囲が広くリカバリーも簡単
- 二次発酵でオーバーしたら焼成温度を高めにする
- 膨らみが遅い原因は発酵速度以外にもある
失敗を上手くリカバリーすることが出来れば、それは失敗ではなくなります。
様々なパターンでの対処法を理解し、どんな状況にも対応できるようになりましょう!