パンが窯伸びしない理由を解決しよう!しっかり膨らむパン作りのコツ

窯伸びの原理

レシピ通りやってるはずなのに、膨らみが悪い気がする…

パン作りで発酵と並んで膨らみ具合を左右する「窯伸び」。

オーブンの中で勢いよく膨らむ様子を見ると思わずガッツポーズしたくなりますが、逆に膨らみが悪いとテンションが下がってしまいますよね。

この記事では、窯伸びの良し悪しを左右する要因と、しっかり膨らむパンを作るコツについて解説します。

窯伸びとは?

食パンをオーブンで焼成する様子

窯伸びとは、パン生地がオーブンの中で膨らむ現象のことで、「オーブンスプリング」とも呼ばれます。

パンの大きさを担うのは発酵具合が重要だと思われがちですが、実は最終的なパンのボリュームの3~7割は窯伸びが担っています

グルテン量の多い粉で作るソフト系のパンはボリュームの7割は発酵で作るイメージですが、グルテン量が少ないハード系は発酵よりも窯伸びでボリュームを作る感覚があり、特に高加水のパンは大きさの7割が窯伸びで作られると言っても過言ではありません。

割合はあくまで体感的な数値です。

窯伸びが悪いとどうなる?

全てのパンにおいて大きく窯伸びすることが重要なわけではありません。

しかし、本来がっつり窯伸びするレシピを使っていながら十分な窯伸びが得られなかった場合、やはりレシピの想定よりもクオリティは下がってしまいます。

窯伸びが悪い場合に現れるパンのマイナス要素はこちら。

  • 見た目が小さくなることで、ズシッと重たく感じる。
  • ふわふわ感やエアリー感の減少。
  • 火通りが悪化することで消化・口溶けの悪いパンになる。
  • 口溶け悪化による甘さの減少・パサつき感の増加
パン・ド・ロデブ

特に高加水のハード系のように窯伸びが最終的ボリュームの大半を担うパンだと、これらの悪影響がより際立ちます。

なぜ窯伸びが起こるのか?

パン生地がオーブンに入って熱を加えられると、以下の三つの作用が働き生地が膨らみます。

  • 酵母菌が死滅するまでの活発な発酵
  • 生地内炭酸ガスの熱膨張
  • 生地内水分やアルコールの蒸発による膨張

では、これら三つの働きに影響を与える要因は何でしょうか?それぞれ詳しく見ていきましょう。

窯伸びの良し悪しに影響を与える要因

イースト量

生イースト

イーストが多い生地ほど窯伸びも大きい傾向にあります。

パン生地の温度は、オーブンに入れられてもすぐには高温になりません。(皆さんが90℃のサウナに入っても、すぐには体の温度が90℃には達しませんよね?それと同じです。)

そのため、酵母菌が死滅する60℃に達するまである程度の時間がかかります。死滅するまでは発酵もノンストップです。

そして、35℃を超えたあたりから酵母菌は増殖をやめ、とにかく炭酸ガスを大量に放出するモードへと移行します。

こうした理由からイーストの量は窯伸びの大きさに影響を与えます。

発酵具合

角食パンホイロ見極め

焼成中、生地に内包されている炭酸ガスは熱膨張します。

つまり、「焼成前にどれだけ生地内に炭酸ガスを用意できるか」これが窯伸びの良し悪しに大きく影響します。

吸水量

水分

焼成中に熱膨張するのは炭酸ガスだけではありません。

生地中の水分が蒸発して気体になることでも体積が急上昇しますし、その水蒸気も温度が上がることで更に熱膨張します。

そのため吸水量が少ないパンよりも多いパンの方が窯伸びが向上する傾向にあります。

吸水量により窯伸びが向上するメカニズムは他にもあります。それについては以降の項目で出てきます。

乳化作用

卵黄

卵黄には「レシチン」という乳化作用をもつ成分が含まれています。

そのため卵を配合した生地は窯伸びが大きくなる傾向にあります。

他にも、製パン改良剤としての乳化剤を使用した場合や、卵黄が含まれているマヨネーズなども窯伸びにプラスの効果を与えます。

生地のガス保持力

ガス保持力が弱い生地だと、発酵で生成される炭酸ガスを保持できないのはもちろん、焼成での急激な膨張にも耐えられず、生地内から水蒸気や炭酸ガスを漏らしてしまいます。

ガス保持力の高い生地を作れば、それだけ窯伸びも向上すると言えるでしょう。

生地の伸展性

生地の伸展性、つまり伸びやすさは窯伸びの良し悪しに大きく影響します。

グルテンの量が多ければ多いほど窯伸びが良くなると誤解されがちですが、弾力が強すぎると生地内部の膨張を押さえつけてしまうため窯伸びが悪くなります。

風船

新品の風船は硬くて膨らませるのが大変ですが、手で伸ばして柔らかくしておくと膨らませやすくなりますよね?

それと同じで、パン生地も弾力だけでなく伸びやすさも重要です。

オーブンの下火

食パンなどの型焼きパンやハード系のパンは、十分な下火が窯伸びに大きく影響します。

食パン 最終発酵
ちぎりぱん

型に入れて焼くパンは、底面と側面は型に覆われているため上面に比べて熱の入りが遅いと言えます。

特に山型食パンはなるべく高く膨らませたいため、上面の生地が焼き固まってしまう前にどれだけ中心部まで熱を送れるかが重要です。

そういった理由から、お店で扱う型焼きパンのレシピでは通常のパンよりも下火が高く設定されています。

デッキオーブン

ハード系に関しては、通常のパンのように天板にはのせず、オーブンの炉床に直接生地を置いて直焼きするのが一般的です。

そうすることで炉床から熱が生地底面へ直接伝わり、表面全体が焼き固まる前に急激な窯伸びを得ることが出来ます。

家庭用オーブンでは下火を個別に調整することが出来ない上、何の工夫もしなければ冷たい天板にのせて窯入れすることになるので完全に下火不足です。

窯入れ直前の生地温度

オーブンに入れる直前の生地が何度なのかによっても窯伸びの大きさが変わってくるとも言われています。

最も一般的に考えられている理由は、酵母菌が最も活発に炭酸ガスを発生するのが35~38℃の温度帯であることです。

そのため多くのレシピでは焼成前の生地温度が32℃付近になるよう調整されています。

パン屋 厨房

もう一つ大きな理由として考えられるのがホイロから出して窯入れ完了までにかかる時間です。

特に一度に製造する量が多いお店では、全ての生地をホイロから出すのも数分かかり、それらをオーブンに入れ終わるまでにも数分かかります。

この数分の間にも発酵は進みます。

ということは、ホイロから出した時点での膨らみ具合が全く同じでも、生地温度が違えば窯入れ完了時には膨らみ具合が変わっているはずです。

この考え方の見落としで角食パンが失敗に終わるケースは多々あります。

食パンがうまく窯伸びしない理由

  • 吸水不足
  • 発酵不足
  • 発酵オーバー
  • こね不足
  • 成形での生地締めが弱すぎる
  • 窯入れ直前の生地温度が低い
  • 上火強すぎ、または下火不足

窯伸び一つ見ても、このように様々な原因が考えられます。

どれか一つが極端に悪いのか、あるいは全てがちょっとずつ悪さをしているのか、その時々で違うでしょう。

また、食パンは型に対して生地の量を多く入れるほど窯伸びしやすいとも言われています(特に山型食パンの場合に顕著に見えます)。

そのため型に入れる量が少ないと窯伸びの勢いは若干劣るとも言えます。

加えて、ゆめちからスーパーキングのようにグルテン量が多すぎる粉を100%で作っている場合、本来その分だけより強く長くミキシングが必要になるのですが、手ごねのためこね不足になってしまい普通の強力粉よりもかえって窯伸びが悪くなってしまうケースも頻繁に見かけます。

グルテン量が多ければ多いほどよく膨らむと思ってた!

ナオキパン
ナオキパン

何事もバランスが大事ですね!詳しくはコチラの記事で解説しています。

バゲットがうまく窯伸びしない理由

バゲットの窯伸びはクープの開き具合に比例します。

クープはいわば「生地膨らみの逃げ道」です。生地の内部はまだ膨らみたがっているのに、先にクープが焼き固まってしまうと逃げ道が無くなり、結果としてクープも開かず膨らみも低下するというわけです。

クープの開き具合を悪化させてしまう原因は以下のように多岐にわたります。

  • 家庭用オーブンである
  • 成形で表面に抗張力を与えられていない
  • 切り込みが浅すぎる
  • 発酵不足
  • 発酵オーバー
  • 生地のガス保持力不足(こね不足・パンチ不足・粉が弱いetc…)

特に成型での抗張力を意識できていないと、どんなに良い窯やナイフを使っても絶対にクープは開きません。

成形を改善せずクープそのものが原因だと勘違いし、高いクープナイフを買ってみたり切る練習を延々と続けてしまう人も多いです。

そうならないよう、まずは成型がしっかり出来ているか見直してみましょう。

窯伸びを改善するコツ

まずは生地の状態を見直す

こね具合、発酵具合、材料の配合など、どれか一つが不適切なだけで窯伸びは悪化します。

地道なチェックとなりますが先ほどの項目で解説した要因をしっかり読んで、自分が作った生地の弱点は何なのか把握しましょう。

天板ごと予熱する

生地の状態が完璧であっても、家庭用オーブンでの焼成だとどうしてもデッキオーブンには敵いません。

少しでもクオリティを近づけるためには、オーブン予熱の際に天板を一緒に予熱しましょう。

お店では天板ごと予熱することはありませんが、天板をアツアツの炉床に置いて焼成するためすぐに天板が熱くなります。

しかし家庭用オーブンには炉床が無いため、左右の出っ張りに天板を引っ掻けて”宙に浮いた”状態で焼成することになり、デッキオーブンと比べると天板が熱くなるまで時間がかかります。

特に型焼きパンやハード系では致命的となるので、天板の事前予熱は必須です。

魔法の銅板を使う

家庭用オーブンに付属している天板は、形状はいびつで使いにくく、熱伝導もそこまで良くありません。

もっとクオリティの高いパン焼きを目指すなら、魔法の銅板を購入することをオススメします。

このように全面的に平らなので、オーブン付属天板よりも広く使え、予熱した天板の上にスライドさせたい時も邪魔なフチがないのでやりやすいです。

というか、スライドさせなくても良い下火が演出できるのも魅力的です。

事前にステンレス板(又はアルミ板)をしっかり予熱して、生地をのせた銅板をその上にのせて焼成するだけでも構いません。

銅は熱伝導が非常に良く、アツアツのステンレス板にのせたらあっという間にアツアツになります。

アツアツの炉床の上に天板をのせる」というデッキオーブンのやり方とほぼ同じですよね?

スライドは失敗すると悲惨ですから、そのリスクが無いのはとても大きなメリットですね。

まとめ

ここで学んだポイントをおさらいしましょう!

  • パンの種類によっては窯伸びが大きさの大半を担う場合もあるため超重要。
  • 窯伸びが悪いと見た目だけでなく味や消化の良し悪しにも影響を与える。
  • 窯伸びの良し悪しに影響を与える要因は多岐にわたる。

焼成に至るまでの過程が上手く行ったかどうかを、生地が見た目で表すのが窯伸びと言えます。

あらゆる基本が詰まっているので原因の特定は容易ではありませんが、改善することが出来ればかなりのスキルアップになるので諦めず一つ一つチェックしましょう!

この記事を書いた人
パン作り研究家
ナオキパン

当サイト及びYoutubeチャンネル「パン作りの教科書 / ナオキパンchannel」を運営。
パン作りのコツや製パン理論を科学的な観点からわかりやすく解説し、パン作り上達の楽しさを広めることに加え、正確な製パン情報の普及に努める。
ベーカリーや食パン専門店など数々のパン店立ち上げや現場責任者の経験有。
自律神経失調症によりパン業界を一時離脱した際に、自身の知識と経験が誰かの役に立つことを願い、2022年5月から本格的に情報発信活動を開始(現在は寛解しゆる~く復帰)。
パンシェルジュ一級。

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