パン作りにオススメの砂糖は何ですか?
レシピによって、お店によって、パン作りでは様々な砂糖が使われていますが、使い分けることで何か違いがあるのでしょうか?
この記事では、パン作りにオススメな砂糖について、比較も交えて解説します。
3種類の砂糖でパンを作り比べてみた!
この比較検証では、パン作りで一般的に使用されている以下三種類の砂糖でパンを作り比べました。
- 上白糖
- グラニュー糖
- きび砂糖
配合は砂糖15%生地、食パンよりも多く菓子パンよりも少ない。
配合量が少なすぎても砂糖の違いによる差が出にくいし、多すぎると風味の差は目立つかもしれませんが「作りやすいかどうか」という点では全て作りにくくなる1ため差を感じ取れません。
だから間をとっての15%です。とはいえこれは十分多い方です。
なのでこれだけ使って違いがちっとも出ないのであれば、あえて使い分ける必要もないでしょうし、少しでも違いが出るのであれば使い分ける価値があると言えるでしょう。
準備は万端。はたして生地感に違いはあるのでしょうか?
砂糖の違いで生地の扱いやすさは変わるのか?
結論、ハッキリとわかるほどの違いは感じ取れませんでした。
よって、少なくとも砂糖15%配合までならレシピの上白糖をそのままグラニュー糖やきび砂糖に置き換えても問題ないでしょう。
きび砂糖の「ミネラル」は何の効果も無いの?
今回の比較検証で使った配合では、きび砂糖も他の砂糖も大きな差は現れませんでした。
しかし、きび砂糖に含まれる「ミネラル」は、製パンにおいて大きな効果を果たす場合もあります。
ミネラルには「補酵素」としての役割、つまり酵素の働きをサポートする効果があります。
酵素?酵母じゃなくて??
酵素は小麦粉やモルトに含まれている他、酵母菌も酵素を持っています。
酵素には様々な種類があり、働きもそれぞれ異なります。
以下にパン作りで重要となる酵素とその働きをピックアップします。
- 小麦粉のでんぷんを麦芽糖に分解する「でんぷん分解酵素(アミラーゼ)」
※小麦粉に元々含まれていたり、添加するモルトや麹粉末に豊富に含まれています。 - 麦芽糖をブドウ糖×2に分解する「麦芽糖分解酵素(マルターゼ)」
※酵母菌が持っている酵素。 - ショ糖(砂糖)を果糖・ブドウ糖に分解する「ショ糖分解酵素(インベルターゼ)」
※酵母菌が持っている酵素。 - ブドウ糖や果糖を二酸化炭素とアルコールに分解する「チマーゼ」
※酵母菌が持っている酵素。この働きでパンが膨らむ。 - たんぱく質を分解する「たんぱく質分解酵素(プロテアーゼ)」
※ペプチドまたはアミノ酸が生成される。粉やモルトに含まれる他、乳酸菌による働きも。
このように、パン作りの発酵や熟成には様々な酵素の働きが関わっています。
今回の検証で使ったレシピはイースト・砂糖の配合量が多いために酵素量の微妙な差による変化が現れませんでしたが、ハード系や自家製酵母の製造では大きな差が出てきます。
ハード系は砂糖を使わない為、甘味や旨味を形成するためには酵素の力を使うしかないからです。
(リッチなパン2だと味の形成は砂糖やその他副材料で出来るため、わざわざ酵素に頼る必要もありません。)
特に粉から作る自家製酵母種(サワー種など)では、一般的な白い強力粉よりも全粒粉や石臼挽きといった酵素活性の高い小麦粉を使った方が、より強い発酵力を得られる上に失敗も少ないです。
砂糖を入れない無糖生地では、でんぷん分解酵素の働きが超重要!
砂糖が違うとパンの味も変わる?
実際、味に違いはあるの?
全く同じだとは言えず、わずかに違いが感じられました。
それぞれの比較を解説します。
上白糖VSグラニュー糖
まず上白糖とグラニュー糖の差ですが、前者の方が口に入れてから甘さを感じるまでの時間が短い。
甘味がダイレクトに舌に来る、そんな感覚です。
ですがこれはすっご~く意識して食べてようやくわかる程度であって、微々たる差です。多分、普通に食べたらわかりません。
きび砂糖VS白砂糖
一方できび砂糖はいくつか違いが感じ取れました。
まず香りです。やはりきび砂糖特有の香りが少しだけパンにも反映されているように感じました。嗅覚の鋭い人なら違いが感じ取れるでしょう。
(以前、菓子パン生地をきび砂糖で作ったこと時には、焼きたての香りがより深いフレーバーで香ばしかったです。)
また、甘味の質もちょっと違うように感じました。
白砂糖を使ったパンは直接的な甘味のようなイメージ、対してきび砂糖は自然な甘味というか優しい甘味というか…そんな感じ。
(とはいえこれは同じ砂糖使用量でも実際の糖分量に誤差があるのも関係しているでしょう。同じ15%でもきび砂糖の場合はその中にミネラル分なども含まれていますから、相対的に糖分率が低下します。)
結局、パン作りにオススメの砂糖は?使い分ける必要ある?
今回の検証で、パン作りに使う砂糖を変えると一応違いは現れることがわかりました。
ですが、結局どれも微々たる差でしかありません。水の量などレシピ調整も今回の配合ならその必要もなかったです。
なので、あまり細かいことを気にしないのであれば、どの砂糖を使ってもらって構いません。
言ってしまえば貴方が普段使いしている砂糖をそのままパン作りに使うのがオススメです。
細かいことも気にして使いたいのであれば…僕の使い分けの考え方を一つ紹介します。
上手な使い分け方
惣菜パンや菓子パンなどは基本的にはパン生地よりも具材が主役です。
具材の美味しさを追求すべきパンであり、生地の美味しさはあまり目立たないと言えます。
なので、具材の風味を際立たせるという意味でも、生地で勝負する必要がないという意味でも、最も安い上白糖をチョイス。
具材のないパン、いわゆる「生地パン」なら生地の美味しさが全てなので、きび砂糖で変化を演出してみても良いでしょう。
きび砂糖はメーカーによって「きび和糖」「素焚糖」など名称も味・香りも異なるので、その違いに拘ってみるのもオススメです。
僕のオススメは業務スーパーで買える「きび和糖」。上品かつ濃厚な香りが特徴的です。
パン以外のところで言うと、カスタードクリームは普通に白砂糖で作るのがオススメです。きび砂糖で作ると全くの別物になります。
あんこはきび砂糖を使っても美味しく作れますが、白砂糖のほうがスッキリした味わいになります。
薄皮あんぱんのようにあんこたっぷりのあんぱんなら、スッキリ系の方が食べやすいでしょうし、あんこ少な目で生地が濃厚なハード系ならあんこも強い個性があって丁度いいでしょう。
ぜひ色々な組み合わせを試してみてください!
まとめ
ここで学んだポイントをおさらいしましょう!
- 上白糖をきび砂糖に置き換える際、レシピ調整無しで問題なく作れる。
- 味の違いは微々たる差。
- ミネラルはパン生地で大きな働きを担うが、配合によっては違いが目立たない。
「微々たる差なら、拘らない」というのも構いませんが、その微々たる差は無意識レベルに訴えかける効果がある可能性もあります。
使い分けやアレンジをする場合、砂糖の役割を熟知しておくとより最適なアプローチが出来るようになるはずです。コチラの記事で詳しく解説しています。
<脚注>